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12人の怒れる男 評決の行方のHKのレビュー・感想・評価

12人の怒れる男 評決の行方(1997年製作の映画)
3.9
シドニー・ルメット監督の名作『十二人の怒れる男』を40年以上経ってからリメイクした作品。
以前買ったまま埃を被っていたDVDを初視聴。画面がスタンダードサイズだったのでアレッと思ったら劇場作品ではなくTVムービーでした。
まあもともとルメット版の前身のオリジナル版もTVの単発ドラマだったそうですが(演出はなんとフランクリン・J・シャフナー)。
とはいえジャック・レモンやジョージ・C・スコットが主演という豪華さで他のメンバーもどこかで見た顔がチラホラ。監督がウィリアム・フリードキン(『フレンチ・コネクション』『エクソシスト』)というのも意外。

脚本(レジナルド・ローズ)はルメット版と同じらしく、セリフも一部を除いてほぼ同じなので役者の違う同じ舞台を観ている感覚ですが、よく見るとカメラアングルや間の取り方などル前作と同じにならないようかなり意識しているように思えます。
前作でヘンリー・フォンダが演じた陪審員8号を『ミスター・ロバーツ』で共演した弟分のレモンが引き継いだ形ですが、当時ルメット版ではフォンダ52歳、リー・J・コッブ46歳だったのに対して、本作ではレモン72歳、スコット70歳とかなり高齢化してます。本作の2人は30歳そこそこの頃に観たと思われる憧れの役(?)を嬉々として演じているように見えます。(スコットは本作でゴールデングローブ賞助演男優賞受賞らしいですが、アカデミー賞の時と違って辞退はしなかったのでしょうか?)。

ルメット版は12人全員が白人男性でしたが、今回は時代と世相を反映してか黒人も数名。タイトルの都合上さすがに女性はいませんが、冒頭の裁判長が女性なのはバランスをとるため?
それに今回はタバコは無し。旧作ではテーブルに灰皿がいくつも置いてあり、ヘンリー・フォンダをはじめ何人もがスパスパ吸ってましたが、本作では20年前ながらすでに陪審員室は禁煙のようです。
扇風機がエアコンになってたのが笑えました(筒井康隆のパロディ『12人の浮かれる男』では季節が冬でストーブだったのを思い出します)。
結局、音楽は無しかと思ってたら、エンドクレジットで聞きなれたオリジナル曲(ケニヨン・ホプキンス作)が流れ、あらためてルメット版のイメージが脳内に蘇ります。

同じ名脚本を名優と名監督でリメイクするわけですから、ある意味面白さは保証されており、またカラー作品(人種も)でもあり、初見の人や若い人はこちらの方が入りやすいのかもしれません。
しかし、その昔ルメットのモノクロ版で衝撃を受けて何度も見返している身としては、今回も見終わったらまた本家のルメット版が観たくなってしまいました。
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