メル

もうひとりのシェイクスピアのメルのレビュー・感想・評価

4.3
長い間巷で噂になっている「イギリスを代表する大作家シェイクスピアの作品は本当は誰が書いたのか…」の一つの説としての話。

「シェイクスピアは書いていない」の根拠として
➀ 52才で死ぬまでの間に37本の戯曲他多くの作品を残しているのに本人自筆の原稿が全く残って無い。

➁ シェイクスピアの遺書には「2番目に良いベッドを妻に遺す」とあるだけで、本や原稿について全く触れていない。

③ 商人だった父親も、彼の妻も2人の娘も読み書きが出来なかったのに、英語の究極的表現とも言える見事な文体であれ程詳しく王室に絡んだ話が書けるのか?。

④ シェイクスピアのサインが何種類か違うものが存在する、等。

ではシェイクスピアのあの沢山の名作は一体誰が書いたか。
それはエリザベス1世の時代に貴族でありながら文才に恵まれた、17代オックスフォード伯エドワード・ド・ヴィアが長い間に書き溜めたものだというのだ。

当時シェイクスピアの戯曲が上演されたグローブ座の火災や、多くの実在する人物とそれらの権力争いからの対立も史実に比較的忠実な流れになっていてかなり興味深い。

特にエリザベスの重臣ロバート・セシルの身体的特徴を題材にした「リチャード3世」を執筆する場面は中々面白い。

そこに生涯独身だったエリザベスに多くの愛人が居て…という設定が絡んで終盤にはオックスフォード伯も自分の出生を明かされることになる。

そして人間の普遍的とも言える親子愛、男女の愛情、権力と企みと裏切りが入り乱れ、まるでギリシャ神話さながらの戯曲を観ている感じだ。

英国俳優だけあって演技派揃い。
リス・エヴァンスの色気とデヴィッド・シューリスの怪演。
「ブリッジ・オブ・スパイ」のマーク・ライランスも役者で張り切り、エリザベス役のヴァネッサ・レッドグレーヴは実の娘が若い時のエリザベスを演じ親子共演。
憎々しげなロバート・セシル役は「イマジン」のエドワード・ボッグが声を抑えて抑えて演じていて全くの別人の様。

個人的にはシェイクスピアの作品は2人以上の人間が書いたと思っている。そしてその内の1人がエドワード・ド・ヴィアではないかと。
エリザベス1世前後のイギリス王室やシェイクスピアの作品に興味があるならば絶対面白い。
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