Azuという名のブシェミ夫人

ムーンライズ・キングダムのAzuという名のブシェミ夫人のレビュー・感想・評価

ムーンライズ・キングダム(2012年製作の映画)
4.5
お気に入りの作品で、ちゃんとレビューしたいと温存しすぎて頭混乱。
再見して落ち着いた素振りを・・・。

色が印象的なウェス作品。
グランドブダペストホテルは赤とピンク、ダージリン急行は青と緑、ファンタスティックMr.FOXは茶色かな。
そして本作のテーマカラーは黄色でしょうか。
色彩の鮮やかさとデザイン的なカメラアングルで目を楽しませてくれるのが、彼の作風で大好きなところ♡
細かなところまで何もかもが可愛らしくて、絶対心惹かれちゃうもんだからズルい。
オッサンですら緑のニット帽に真っ赤な服で可愛く仕上げちゃってさ、もう。
Blu-rayジャケットも素敵で漏れなく購入しちゃうし・・・。
(それは引っ掛かる自分が悪い)

おマセな子供たちの疑似駆け落ち逃避行。
大人顔負けの能力と子供独特の想像力で、彼等子供たちの冒険はなかなか大きな騒動へ発展。
まぁ子供の世界観というのは、一事が万事と言うか・・・周囲から見れば可愛らしい細やかな悩みが、自分を包む世界の全てを崩壊させるように思えたりするもの。
この少年の心に影を落としている一番の問題は難しい事ではあるけれど、本来は周囲が解決してあげられるはず。

そんなこんなで子供たちがメインの物語に見せかけて、いつだってウェス・アンダーソンの作品を形作るのは、“かつての子供”である成長しきれない大人達じゃないでしょうか。
子供たちに巻き込まれ、振り回されていると彼らは思い込んでいるかもしれないけれど、子供たちの騒動はキッカケにすぎないのでは?
この大人達なら遅かれ早かれ、自分たちの蒔いた種によって何かしらの一悶着を起こしていたでしょう。
でもきっと、この騒動が無ければその事にすら気づかなかったでしょうけどね。
それがどうにも滑稽であり、しかし自分もまたそんな大人の一人ではないかと身につまされるのです。
明日は我が身かもしれません。

この物語で人生における大きな一歩を踏み出したのは、大人達です。
成長した大人達が見守り、愛情をもって慈しみ育んでいくことで、あの愛らしい子供たち一人一人に、目には見えなくとも無限の可能性を秘めたムーンライズキングダムが創造される事を願って止みません。