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シュガー・ラッシュのkanegoneのレビュー・感想・評価

シュガー・ラッシュ(2012年製作の映画)
4.0
自分の出自を恨んだこと、ありますか?

30年くらい前にはそう珍しいことでもなかったと思うんですが、私が子供の頃は毎日のように親父に叩かれて、でも叩かれる理由が分からなかったので日々混乱してまして、

自分の出自を恨めしく思う毎日でした。

オトナになる過程で、自分の至らなかったところも、親父が婿養子としてストレスフルな毎日を送っていたことも徐々に理解していくわけですが、当時は

なんでこの家に生まれちゃったんだろうなあ~

って思うことが多かったんですね。

中学校に入るまでは閉じてて狭くて憂鬱な世界しか見えてなくて、その先まともに生きていける気がしなかったのです。

この映画はゲームの中の世界が題材なんですが、ゲームの中って悪役は初めから悪役ですから。

何をどうしても、ずっと懲らしめられるポジションなんだよね。ってのが前提になってます。

でも、数十年前は、実際現物の人生だって奴隷の子は奴隷だったし、そういう時代の由来で今もたくさんの人が世界中で身分差別的な圧力と闘ってるし、生まれはコントロールできないという点は、ゲームの世界と今でも変わらないのかもしれない。

ただ、現実の人生は、生まれた後に本人の目が覚めて、適切に努力すればある程度までは報われます。それを社会が許してくれるようになりました。そういう人間社会の前進、人の生き方そのものの前進を描いた映画やドラマは無数にあって、そういうものを身体に取り込むために映画を観てるところもあるわけですが、

おかげさまで今は、ゲームの悪役でさえ、ドラクエのラスボスが後で仲間になったりするとかね、人生やり直すチャンスが与えられる世の中になりました。


自分の生まれを恨んでても仕方がない、ってことをしっかり理解するのって、若くて未熟なうちは簡単なことじゃないと思うんですが、

この映画は、そういうことを理解するのに役立ちそうな物語。
自分の役割を見つけて、自分にできることに気づいて生きるのが、人の幸せなんじゃない?
という、書いてみたら陳腐なんだけど、そういうことが心に伝わってくる映画でした。

でも、自分の生まれを呪って生きてきた人からしたら、「そんな簡単じゃねーぞ」って思うところもあるかも。

こういう映画を観ても、過去のわだかまりみたいなものを感じなくなったことで、自分も大人になったのかな~と感じた一本でした。長い。
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