ニトー

ふがいない僕は空を見たのニトーのレビュー・感想・評価

ふがいない僕は空を見た(2012年製作の映画)
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普通にいい映画でした。ダンサーインザダークをソフトに包んで地に足つけることを意識したような作りになっている。
窪田正孝が相変わらずいい演技なのと、声がまだ高いおかげで高校生役も違和感ない。ただケータイ刑事の流れから見てないと、今の長髪の彼に慣れている観客は短髪に違和感あるかもしれんです。あと瑛太の弟本当に瑛太に顔似てる。

話はすごくわかりやすい。生と性の話です。窪田正孝の最下層貧困なのに傲慢(プライド)のせいで飢え憤怒嫉妬で永山絢斗のハメ撮りをばら撒いたりと、キャラ造形がクリシェに陥っていないのもさる事ながら窪田正孝の目のおかげもあるんだなぁ。ハメ撮りバラまくとこはすごい観ていて微笑ましかった。ちょっと「ダンサー~」のビョークのミュージカルシーンとも重なる現実へのレジストがとてもよい。

田畑智子はなんていうかもう、絶対に幸せになれなそうでギリギリのところでなれそうでやっぱり最後はバッドエンドに行きそうな存在感が儚くていい。JTの人の絶妙なキモイ演技のおかげでどこか屈折した夫婦生活(姑が来ると平然と姑の横に座る夫とかの演出も光っていましたね)であることがわかる。よだれと涙ですぎで笑ってしまったんですが。ウィキには愛情を持っているとありましたけど、あるかな?どう考えても嗜虐嗜好と性欲発散のための実に都合の良い存在としてしか見ていな異様な気がするが。まあ愛情というよりは、固執だろうか。

あとみっちゃん。みっちゃん最高。こういうじとじとした話の中でああいうサバサバした人がすっぱりさっぱりした振る舞いをしてくれると気持ちいいですよね。
ショタコンボンボン犯罪者の三浦くんもどっかで見た顔だなーと思ったらあの進撃の巨人でジャンの役をやっていたんですね(笑)。進撃では臭みのある演技だなーと思った(声質もあるんだろうけど)のですが、こちらでは普通に演技ができていたのでやはりあれは演技指導の問題なのだな、と樋口真嗣の顔を思い出したり。
あの人の「俺はどうしようもなくダメなやつだから、どうしようもなくいいことしないと釣り合わない」みたいな台詞があるんですけど、この考え方はすっごく自分が世界と向き合うときのスタンスに似ていてかなり共感できた。そりゃ小さい子供に手を出したらいかんですが、それが悪であることは彼にもわかっていて、それがどうしようもないからこそどこかで贖罪をしようとしているわけで、その二律背反って実に人間的なものじゃないか、と。

全体的にいい映画だったんですけど、あくつと松永に関してはもうちょっとどうにかならなかったのだろうか。特に松永に関してはなまじ尺を取ったがために最後にアップで映してしまうのは逆に消化不良感が増してしまっているような気がするが。あれはもっと引きで撮ってクラスメイトとか全体の中ですこし目立たせる程度のほうがより普遍性を帯びるような気もしますが。

ただまあ最後の最後で「やっかいなもんつけて生まれてきたな」という台詞で色々と許しました。その通りすぎるので。
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