カテリーナ

空気人形のカテリーナのレビュー・感想・評価

空気人形(2009年製作の映画)
3.7
男の性欲を満たす為だけのラブドール
そのラブドールがある日突然心を持ってしまった
人形に命が宿る 奇想天外な設定は
原作が漫画だった
是枝監督が自分の原案以外のテーマを持ってきたのは珍しい

映画全体を覆う寒々しさ
孤独で空虚な人々を映し
空気人形を安心させる
中身が空気だけの空気人形
中身が空っぽな人間

ぺ・ドゥナの透明感と冴え冴えとした空気が今でも心に残る

街でビデオレンタルの店員の
ARATAとのめぐり逢いにより
起こる事件は
やはりファンタジックだ
裸で抱き合うふたりのショット
人形故の純粋さにより
愛する人を傷つける
動かなくなっても何が起きたかわからない

その時のARATAの苦悩の表情
ぺ・ドゥナの笑った顔の対比が不気味この上なかった

愛することや傷つくことを知った
自分が何の為に命を吹き込まれたのか
悩む空気人形の姿は人間のそれと
同じである
自分を作った人形師を訪れる場面では
山と積まれた人形に囲まれた
オダギリジョーが不穏なオーラたっぷりに
登場する 創造者の傲慢さというより
悲しみや孤独を醸し出す
やっぱり空気人気の問いかけには
明確な答えなんて用意されていない
それは自分で答えを導くものなんだ
彼女の最期を見届けた後
その事を描きたかったのだろうかと気付く
是枝監督の奇妙な人形譚であった
カテリーナ

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