カテリーナ

PERFECT DAYSのカテリーナのネタバレレビュー・内容・結末

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

木漏れ日
〜木々の葉が風で揺れるたびに光と影が漏れる様〜
この映画の最後に素晴らしい撮影の
木漏れ日の揺らぎを映しながら
日本語で説明される
ドイツ人の監督が日本の独特な自然の味わいを映画の中に取り込む理由は何だったんだろうか

役所広司演じる平山は東京の公衆トイレの清掃の仕事をしている
カーテンを開けたまま眠りにつき
歩道を竹箒で掃く音で目を覚ます
布団を畳んで
昨晩読んだところを確かめてから本を閉じ階段を降りて顔を洗う 
部屋で育ててる観葉植物たちに
霧吹きで水をあげる
淀みないルーティンの隙間に空を見上げて微笑む平山という男に次第に好感を持つ
仕事が休みの日はママに会う為浅草の飲み屋に通っている

癌を患い別れた妻に一目会いたいと
店を訪ねてきた元夫が
我が命の短い事を悟り寂しそうに呟く
「影って重なると濃くなるんでしょうか
分からない事が分からないまま
人生は終わって行く」とため息をつく
それを隣で聞いていた平山は
「やってみましょう」と元夫の腕を掴む
平山のアクティブなこの対応には
理由がある
思慕を寄せるママに男がいたと
勘違いをしていたとわかった後だから
ちょっとテンションが上がっていたんだ
この元夫を元気付けたいと欲が働いた後
二人で影踏みをする
役所広司と三浦友和が良いんだ
ちょっとはにかみながらも 自分の影を踏まれるとムキになっちゃう
無口な平山の心の動きを静かに追いかける
カメラはふっと微笑む彼を見逃さない

年をとってからこの映画に出会えて良かった 
ラストシーンで起こっていた事を
私なりに確実に理解できたからだ
命の儚さを知らないと
わかり得ないことがある
ラストシーンにはその秘密が隠されていた

平山が東京の公衆トイレを巡りながら
或いは
お辞儀をして入る神社のベンチに腰掛けてサンドイッチを頬張りながら
見上げる空や木漏れ日のなんと綺麗なこと
東京にもまだこんなに綺麗な緑が残っていたんだと嬉しくなる
スクリーンを見ていた私は平山と同じ微笑みを浮かべていた 何度も、幾度も。
ヴィム・ヴェンダースが敬愛する小津安二郎の作品で頻繁に聞く名前は平山だよと
会社の上司からの指摘にニンマリ






追記
車の中で平山が聴くのが
カセットテープなのが好き 配信されてるサウンドトラックはベビロテ中
石川さゆりの『House of the raising sun』は涙もの
画面サイズが途中で変わったのも全く気付かなかったのでもう一回劇場で確認したい
カテリーナ

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