カテリーナ

オッペンハイマーのカテリーナのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

原爆投下の場面は目の前で起こったような錯覚

ホワイトハウスでの
オッペンハイマーとトルーマン大統領との会話

「日本人は原爆を造った人を憎むのか?否、日本人が憎むのは
原爆を落とした人間だよ
原爆を落とす事を決定した大統領の私の事だよ」
〜違う!違う!〜
〜両方だよ〜

丁寧に描かれる
トリニティ実験のカウントダウン
その刻まれる数字が
広島と長崎で不幸にも
亡くなってしまう人々の命のカウントダウンのように響く
膨らむ黒煙が生き物のように広がって行くのに無音が長く続いて
嫌な感じ
やがて暗闇を切り裂く爆音 
劇場が揺れたような錯覚に
陥る 感情が乱れ 混乱する
声なき声で叫ぶ
「これを日本に落とすの?」
この場面で私がこんなに感情を
揺さぶられたには理由がある
BLACKHOLEの特集で
戦後広島で生まれ
幼少期に被爆者の方々の写真や映画を見せられ 中学生になるまで
悪夢にうなされたり 雨音が
爆音に聞こえたり 窓の外で光る雷
が原爆にならないかとどうか、平和でありますようにと祈っていた
というその人の
悲痛な言葉を聞いたからだ


ラストシーンの
キリアン・マーフィーの表情は
何とかマンハッタン計画を阻止しようと計算ミスを指摘した
アインシュタインとの会話で
壊されたのは自分で
地球が壊滅に向かう
頭の中のビジョンを見ている
取り返しのつかない後悔に塗れた彼だった
「我は死神なり、世界の破壊者なり」オッペンハイマーの悔恨の念
クリストファー・ノーランは
オッペンハイマーをヒーローとしては描かなかった事がわかる

自分の意思に関係なく
核爆弾に強引に引き寄せられ
もう他人事ではなくなってしまった

また、オッペンハイマーの妻として
彼を支え続けたキティを演じた
エミリー・ブラントの
テラーの握手を拒んだ時の顔
矢のような視線で
赤い唇を噛む表情には
ずっと緊張を強いられて疲弊していた私はその一瞬溜飲を下げることができて頬が緩んだ

オッペンハイマーを陥れる為の罠
を仕掛けるストローズをはじめとするローレンスにしても男たちの隠された嫉妬心は悍ましい

オッペンハイマーが
8月6日の広島への原爆投下の成功を祝う面々を見ながら 彼の頭の中で
広島で被爆した人々にすり替わる
描写について 色々と言われてるが
BLACKHOLEで てらさわホークが
言及していたオッペンハイマーの
想像力の乏しさのせいで
その程度の描写に留まったのだと
信じたい
クリストファー・ノーランが
本当の原爆の被害を知らない筈はないと柳下毅一郎の言葉は説得力があった。
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