カテリーナ

哀れなるものたちのカテリーナのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.0
不協和音な音楽が心地良い

ヨルゴス・ランティモス監督作品の中で
一番好きかもしれない
初めて見る外の世界に心躍らせる
ベラの心情を映すような
旅先の空の色 白色にパステルの色を滲ませた雲の何と綺麗なこと
ファンタジーのように流れる景色は
劇場で堪能できた喜びに浸れる
一転
船旅での囚われの身に戻ってしまった
ベラの窮屈さを表すかのような
その深くて奥行きを感じさせる藍色の空
息を呑むような美しさ
童話の中の建物のようなベージュ色の
壁の装飾には溜息
劇場を出た所で女子ふたりが声を揃えて「美術が良かった」の言葉に大きく頷いた
大きい袖に特徴のある少しも着たいと思わないベラの衣装も昔でも今でも無い
何処でも無い感じがして良かった
着飾った男女がダンスを踊るフロアーで
彼女だけ浮世離れしてる
他の誰とも違う唯一無二の存在を際立たせる 彼女の踊り まるで初めて音楽を聴いて身体が勝手に動き出すような衝動が
こちらにも伝わる
〜何も考えず何からも囚われず音楽に身を任せられる開放感〜
私が心底ベラが唯一羨ましく感じた場面
理性を取っ払って人目を気にしないで
思いのまま行動する事ができたら
どんなに良いだろう
私の中に眠っていた願望が揺り起こされた
瞬間だ

ベラが一文無しになって身体を売って
貰ったお金で食べるエクレアの味
彼女はその時甘いエクレアと人生を学んだのだ

フェロモンを撒き散らかしたマーク・ラファロとベラの逆転する関係性も興味深い
世界を冒険をする為の一つの手段でしかなかったベラは早々にsexに飽きる
本を読む事を覚え哲学のほうが面白くなってしまう
ベラに拘泥し自分を失ってしまった
彼はベラにとって危険な存在となる
どんなに窮地に立たされようとも
冷静に考え行動し切り抜けて行く
力強さを全面に押し出すこの作品は
かつての名作フランケンシュタインとの比較対象となることが多い
男だったフランケンシュタインに産み落とされた男は自らの行動で我が身を滅ぼしてしまったが ベラは人に流される事なく知識を積み重ね立ちはだかる壁を
自らの力と知恵で乗り越えた

誤解を恐れず言えば男は愚かで女は賢いという結論だ
次のランティモス監督の作品でどんな世界を魅せて私の芯に眠る何を揺り起こしてくれるのか楽しみである。
カテリーナ

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