カテリーナ

Pearl パールのカテリーナのネタバレレビュー・内容・結末

Pearl パール(2022年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

ミア・ゴスの本気度

パールの願いはただこの田舎から出て
行きたかっただけなの
その手段としてオーデションに合格して
女優として全国をまわること
その事に拘泥して狂ってしまった

社会的倫理観から外れ
狂ってしまったのは仕方ないよね
私に押し付けがましくなく
パールの極端な願望に共感してしまった

父親が車椅子の生活で母親が女手ひとつで
育てたパールをがんじがらめに縛り付ける
戦争に取られてしまった婿入りした夫は
いつ帰ってくる無事に帰ってこれるか
わからない
友達のいない代わりに
名前を付けた牛たちに餌を与えて
動かない父親の口に食事を運び
自分の髪の毛も洗いながら父親の身体を拭く なんの面白味もない日常
アメリカの田舎の暮らしの閉塞感
貧しさが嫌というほど描かれる
その中で健康で有り余る若さを持て余し
背の高さほどのトウモロコシ畑の向こうに
立つ案山子を相手にマスターベーションをして発散する悲しさ侘しさ

自分の持ち物のように娘を扱う母親は
パールや(私)にとっては今作の最大のヴィランに映る
この家のしがらみから脱出したいパールに対して決して娘を離すまいと口ごたえを許さない母親 家庭を維持する為どれだけの
苦労を重ねたかを最初は静かに
最後は声を荒げて訴える
その顔は最早母親ではなく
貧困という地獄に娘を引き摺り込もうと
血迷った狂った女にしか見えない

パールにとって母親は自分の夢を妨げる煩わしい女にしか映らない
教会のオーデションに行く為に
その道を塞ぐこの女は邪魔者
正にこの一途な想いは燃え上がり
母親に火を付けたかのよう
火に包まれ床に転がる母親に
沸騰して煮えたぎる鍋を掴みその熱湯を
かけるパール
最早助けたいのか殺したいのか
わからなくなる

ヒステリックになり我を忘れて自分の道を
塞ぐ者たちを排除した後の
夢の舞台
精一杯の笑顔とダンスを披露する
「合格です」
その言葉だけを待ち侘びていたパールは
我が耳を疑う
「不合格です」

この先のパールの生活は我慢という二文字しか待っていない
一瞬でも夢の舞台に立てたことを唯一の誇りに
死の晩餐会の最中に戻ってきた夫との砂を噛むような生活が彼女を
殺人者のまま留まらせるのだ。
カテリーナ

カテリーナ