カテリーナ

麦秋のカテリーナのレビュー・感想・評価

麦秋(1951年製作の映画)
3.8
淡島千景の可愛いこと

原節子の私を太陽のように照らす笑顔同様
『東京物語』で初めて彼女を見た時に
感じた天真爛漫さはこの作品でも貫かれていた
小津安二郎を辿る旅は同時に原節子の存在抜きでは語れないと認識する

台詞の応酬とテンポの速さは
想定外だった 
特に原節子の登場場面の
ポンポンと弾む会話は観客を
飽きさせないが
菅井一郎の
時にしんみりとさせる場面との緩急のとりかたも絶妙だった

小津安二郎劇団と呼んでいる(私が)お馴染みの俳優たちの
キャスティングも楽しい
原節子の縁談に苦悩する
笠智衆は『東京物語』では
物静かで穏やかな父親役だったが
菅井一郎にその役をあてがい
『麦秋』では若々しい医師の兄役で
少し気難しそうな堅物
年齢も職業も思いのままに
演じることができるんだなぁと感心
そうそう、『東京物語』では
夫婦役だったけど『麦秋』では
親子の役だった東山千栄子は違和感無しなのも凄い
逆に菅井一郎が笠智衆の父親役だった方が違和感大有り
菅井一郎のきれいな顔の輪郭なんかがいかにも若々しくて
老けメイクが下手だなぁ

絶対に動かさない小津安二郎独特のカメラワークや
昭和のモダンなインテリア
が何故か心を静めてくれる

俳優の表情を静かに見つめている
カメラがふと
老夫婦の見上げる空に向けられて
秋の色の空に風船が揺れている
自慢の娘の縁談に心を乱された
親の気持ちを象徴していた
風に飛ばされて行く風船は原節子そのものに見えたっけ
カテリーナ

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