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アンチクライストのdeenityのレビュー・感想・評価

アンチクライスト(2009年製作の映画)
2.5
ラース・フォン・トリアーの作品は毎回鬱になるのはわかっていても楽しみで、そこに感じるものがあるから素晴らしさを感じさせられるのだが。本作はまた異質。というよりも一言で言えばトリアーの良さがあまり感じられなかった。そこが残念でしょうがない。

明らかに見る前から、ジャケ写を見たその瞬間からやばさは感じてた。その直感を一切覆さない出来。まともに見ることすら困難なほどのシーンが多々あり、まさに苦痛。
題名からそもそもやばさは伝わるのだが。『アンチクライスト』。「反キリスト」か。宗教を理解していない私だが、外国でそれを大々的に示すことのやばさくらいは理解できる。それをやってのけるんだからトリアーはやはりやばい。
題名の最後の綴りが「♀」になってるのはそうゆう意図があるみたいですね。「反女性」。自分のあそこを傷つけたり多くの顔のない女性が迫って来たりと、それらしいシーンが多く見受けられた。

ただ今作の欠点は、個人的には二点にまとめられる。今までの作品と比べて明らかに鬱表現がストレート過ぎて、同じ嫌悪感でも完全に別物の嫌悪感を抱いてしまう点。それでいて主張が難解過ぎる点。
トリアーの良さは最後に突きつける絶望感はあっても、そこに胸糞悪さを感じても、どこか清々しいというか嫌な気分にさせすぎないというか、とにかくそうゆう感覚的な物を感じさせてくれる。今作にはそれを感じられない。ただ嫌悪。
救いのような冒頭とラストの同じ曲でのスローシーン。結局のところどちらも救いではないし、そこに描かれるのは絶望なのであって、こういう表現はトリアーの右に出る者はいないと感じる。今作の良さはそれだけ。こうゆう嫌な部分の描き方は違うんだよ、トリアーさん。
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