ぬーたん

愛、アムールのぬーたんのレビュー・感想・評価

愛、アムール(2012年製作の映画)
3.8
トランティニャン③←トラとニャンの入った名前が気に入ってます。『暗殺の森』から42年後の80歳位のトランティニャン。一気に老けた(そりゃそうだ。森で生まれた子が42歳になっとる)その間の作品を観ようと思ったが在庫なし。顔は同じだが、シュっとした雰囲気はなく、何処にでも居そうなおじいちゃんに。これは役作りなのか素顔なのか?それは来月リリースされる『男と女 人生最良の日々』←副題がダサっ で御年89歳のトラさんを観てから判断しよう。
監督はミヒャエル・ハネケ。もう悪い予感しかしない😅ちゃんと完走出来るか不安だったが、完走出来て感想書いちゃう。ハネケも当時70歳で、キャスト同様お歳だから、柔らかい感じでホッとしたが、最後にヤラレタ~と。この作品の後の2017年『ハッピーエンド』もトラティニャンと今作の娘役イザベル・ユペール。これも観たい。
ニャンさん演じるジョルジュの奥さんアンヌ(相手役アンヌが多いな)はエマニュエル・リヴァ。
2017年に亡くなった、89歳。この作品当時は85歳だった。アカデミー主演女優賞では史上最年長85歳でのノミネート。素晴らしい。広島で撮影したことがきっかけで広島をその50年後にも訪れたそうだ。上品で可愛いが、断固として自己を貫きプライド高いおばあさんを熱演。最後の方はもう、圧倒された。
ジョルジュはアンヌ無しでは生きられない。常に夫婦付随で生きて来て、病気になっても自宅で献身的に介護する。
この夫婦は音楽家で、離れて住む一人娘も音楽家。そのエヴァをイザベル・ユペール。数多くの賞を獲っている。『ピアニスト』で有名。『8人の女たち』にも出てたのね。綺麗。気が強い役が上手かった。
いきなり結果を見せちゃう。それもかなり衝撃的な。
そこから時を戻して、まだ元気で演奏会を聴きに言った頃に。後の自宅を訪れるこの演奏家はアレクサンドラ・タローという本物のピアニスト。本人役で出演している。今作で役者デビュー。イケメンだ。タローちゃん♡
アンヌは間もなく発作で半身に麻痺が残る。私の母も80代だが昨年脳梗塞で倒れ、半身に麻痺が残って今も自宅でリハビリを続けている。幸い発見が早く軽症で、最初は何を喋っているか理解出来なかった言語障害も完治し、足元はおぼつかないが杖と歩行器で身の回りのことは自分で出来るまで回復した。そんなことを思い出しながらこの映画を観たが、現実的ゆえに心はずっしりと重くなった。母もそうだが自分自身や私より数歳年上の旦那もいつそうなるか分からない。
こういう夫婦の話としては『ロング、ロングバケーション』を思い出すが、あちらはハチャメチャな夫婦で明るいのが良かった。独り者だが『92歳のパリジェンヌ』もやはり老いた母と子供たちの、尊厳死の話で心に刺さった。しかし、この映画はリアル、本当にリアルで、似たような現実と向き合って人にはかなり辛くずっしりと来る話だと思う。
ただ、映画として、お洒落だ。水が表すこと。鳩が象徴するもの。たくさんの花。パリの高級アパルトマンの風景。キッチンとその脇の小部屋。何もかもに意味があって、そこから語り掛けてくれる。そのセンスの良さと脚本の上手さに驚く。
そして何より、主役のお2人の見事な演技よ。この2人のシーンに流れる何とも言えぬ空気感。どうということのないシーンの長回しに最初はイライラするが(寝そうになるけど)そのゆっくりと流れる時間が、この2人の速度なのだ。
素晴らしかったが、辛過ぎたので、もう観たくない。ので評価はやや低め。
余韻が残ってしばらく何も手に付かなかった。おやつは食べたが😅
トランティニャン3連チャン、楽しかったニャン。る
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