唯

清須会議の唯のレビュー・感想・評価

清須会議(2013年製作の映画)
3.3
これは最早、秀吉の秀吉による秀吉の為の映画ではなかろうか。
彼は、織田の家に留まらず、もっともっと先を見ている。常にてっぺんを目指している。
メリハリのある振舞というか、おちゃらけている様でありながら常に冷静沈着で強かな、そのカリスマ性が光る。
如才ない世渡りの術を以って人々の心を掴み、相手を行き場なく追い詰める立ち回りの巧さと先見の明も、武士として一級品で。
天下人として新たな時代を創建するという夢を語るシーンは、彼の情熱と野心溢れる眼差しが実に美しい瞬間だ。
それと、三法師様こと幼き秀信に皆が一堂にひれ伏す光景は壮観。

ノリの良い寧々ちゃんというか中谷美紀が可愛くて。
秀吉とお似合いでラブラブだし、笑顔で送り出してくれて、常に背中を押してくれる奥さんは嫁の鑑だ。
この夫婦は、ポジティブであること・いつも笑顔を称えることの強さを示している様に思う。

役所広司演じる柴田勝家は、宿老でありながら、ただの阿保なおじさんで本物の馬鹿。
大きな声を出せばどうにかなると思っているタイプで、ああよく居るよなあ、という仕事の出来ない奴のステレオタイプ。

戦国武将にちっとも興味の湧かない私であったが、戦でない会議場での闘いは非常に面白く鑑賞。
身体を動かしてのそれより、人心を動かす論戦の方が魅力的だよなあと。
戦国時代から日本には忖度だらけだし、会議の結論は会議室の外でほぼほぼ決まってしまっている。
戦国の政治は、当時の武士の人間関係がダイレクトに表れており、そこを紐解くことが魅力なのかなと初めて思った次第。

男達の時代ではあるが、全て戦略的お歯黒の女房達が実は一番怖い。
歳下の女房は歳上の様に、歳上の女房は歳下の様に、なるほど。

脇役まで豪華キャストで固める三谷組の布陣は流石。
その中で剛力彩芽が一人だけ浮いていた感は否めない。

織田の家系は余程の鷲鼻だったのか。
それにしても、旗取り合戦に躍起になるなんて、なんて平和なのだ。

竹馬に乗りたくなった。
唯