こたつむり

グラバーズのこたつむりのレビュー・感想・評価

グラバーズ(2011年製作の映画)
3.6
♪ 二日酔いが怖くて 酒が呑めるか
  それなら三日三晩呑み続けりゃ怖くねえ

世界を救うのは酔っ払いだ!
…なんてキャッチフレーズのモンスター映画ですが、思っていたよりも酩酊感が薄く、理性的な作品でした。

舞台はアイルランドのある島。
自然豊かな風景は雄大さと牧歌的な雰囲気を兼ね備え、水平線の向こうに焼ける空は胸打つレベル。怪物さえ出てこなければ、感動ドラマと勘違いしそうな舞台です。

また、登場人物の頭の回転も速く。
怪物の存在が早々に露見し、弱点も明らかになるのはストレスフリー。予算を押さえるためとは言え、尺が短いのはテンポの良さに繋がりますからね。酔っ払い映画とは思えないスピードです。

特に物語の発端となるお爺さんが理性的。
普通の映画ならば“いの一番”に殺されそうな造形(鼻の頭が赤く、常に酔っぱらっている雰囲気)なんですけど、真理を突いたセリフをガツンガツンとぶっ込んで来るのです。

ただ、理性的な分、酩酊感は薄いわけで。
もっと“はっちゃけて”も良かったと思うんですが…この辺りはお国柄なんですかね。イギリスでは“酔っ払い”が多いようなので、ハジけた描写はそれを助長してしまう…とか。一応、紳士の国ですものね。

だから、性的な描写は皆無に等しく。
アメリカの映画でありがちな「ダイナマイトなボディでもいいんじゃない」展開はありません。というか、島民は枯れた人たちばかりなので…(←失礼)。

まあ、そんなわけで。
題材の割には真面目なモンスター映画。
コミカルな場面もありますが、方向性としてはブラックですし、ボタンの掛け違いで爆笑するような地味さなので人を選ぶと思います。鑑賞する際は期待値を下げたほうが吉ですね。

最後に余談として。
本作のモンスターは何かに似ているな…と脳内を検索して出てきたのがモルボル。『ファイナルファンタジー』シリーズで最低最悪な存在として描かれる怪物でした。“臭い息”は全ての状態異常を引き起こすんですよね。懐かしいな。
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