リッキー

魔女と呼ばれた少女のリッキーのレビュー・感想・評価

魔女と呼ばれた少女(2012年製作の映画)
3.6
986本目。190324

紛争が続くコンゴ共和国が舞台となっています。
ある日、反政府のゲリラが主人公の住む村を襲撃し、少年たちを拉致していきます。その中にコモナも含まれていて、彼女は自分の両親を銃で殺害するよう兵士に強要されます。
娘をただ見つめる両親の目には、諦めと少女への祈りが込められているようで、冒頭よりいたたまれない気持ちになります。
わずか12歳の少女にとってあまりにも残酷で耐え難い現実です。

その後兵士として教育され、政府軍と戦闘し、戦いがないときには労働を強要され、希望が見えないその日暮らしが続きます。
そんな生活の中、彼女は同じく少年兵であったマジシャンと惹かれあっていきます。二人は戦闘のない生活を送ろうとゲリラからの脱走を試みますが・・・。

精神および肉体的に未熟な二人の淡い恋心を描きながら、生きるために血生くさい戦闘に身を投じる毎日を対比的させており、戦争という悲劇の不条理さが強調されています。
作品の中では少女の心の葛藤はあまり描かれていません。そもそも彼女には選択権がないからです。
ただ、彼女には多くの亡霊が見えるだけです。その亡霊は全身白塗りの人形のようで、一見安っぽく感じますが、見慣れてくるとリアルでない分、気味悪ささえ感じます。また子供には、亡霊はこのように見えているのかもしれません。

コモナはゲリラの部隊長にレイプされ妊娠してしまいます。決死の覚悟でゲリラから逃げ出した彼女が、いつも悔やんでいるのは両親を供養できなかったことです。出産後、自分の生まれ育った村に戻り、やっと両親を弔うことができて、亡霊を見ることはなくなり、子供とともに新しい人生へ旅立つことができます。

アフリカでの紛争や少年兵の話は知っていましたが、このように映像で見ることで、その残酷さにショックを受けました。この主人公のような子供を巻き込むことはあってはならないと強く思います。

作品中に鉱石を採掘するシーンがありますが、 この鉱石から精製されるレアメタルは電子部品としてパソコンなど精密機器に使用されており、 日本にも輸出されています。
我々が普段なにげなく使用しているものの中に、こんな壮絶な環境下で採掘されたものが使われていることを知ると、我々も決して無関係だとは言えないと感じました。
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