本作の監督のオスカー・レーラーは、あの夭逝したドイツの天才映像作家、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの後継者と目されていた人らしいと、購入したDVD📀の帯にはあったが、過去作のポートフォリオを見てみると、残念ながらファスビンダーには及ばないようだ😔
原作は、現代文学の最高峰の一つ。フランス人作家、ミシェル・ウェルベックが著した同名の小説。フランス最高の文学賞、ゴンクール賞を受賞しているが、その内容の際どい性描写から、非難が続出した問題作。性依存症の兄と、アセクシュアルな弟。二人の物語を通して、人間存在における性差とは?というのを、相当な深度から問題提起している。ウェルベックは、三文ゴシップ誌のような下世話な狙いで、性描写を過激にしたのではない。この小説の人類愛への粒度の高さゆえに、そういう設定に意図的にしていることが分からないと、この小説の真価は残念ながら味わえない。この小説のとあるシーンは、もっとも切なく哀しい愛の話しだと思っている。また、最後のソリューションと、それに付随する考察は、「カラマーゾフの兄弟」の"大審問"の章と並ぶくらい、一読に値する素晴らしものだ。
だからこそ、フランス🇫🇷のノーベル文学賞受賞作家がたった1人を除いて全員受賞しているゴンクール賞を受賞出来たのだ(その1人とは、昨年ノーベル賞を受賞したアニー・エルノー)。その映像化が本作なのだが、健闘しているとはいえ、原作のエッセンスのところまでうまくニュアンスを伝えられてなくて残念。開明獣の持論として、原作を忠実に全部映画に落とし込むのは不可能なので、いかに監督が原作に共鳴した部分だけをうまく抽出してアレンジするかが鍵だと思ってる。残念ながら、この映像化は、原作の持つ深遠さと哀切さを届ききれなかったものだ😔
おまけとして、戦後の海外小説で開明獣の個人的お薦めを10冊挙げておきます。ホントは30冊くらいご紹介したいのですが、長くなると迷惑ですしね💦あとこれは順位順ではありません。もし、ご興味あれば、書店なり図書館なりで、手に取ってみてください😌ご質問もご遠慮なく。
・百年の孤独: ガブリエル・ガルシア=マルケス(新潮社)
・「スローターハウスNo.5」カート・ヴォネガット(ハヤカワSF文庫)
・「素粒子」ミシェル・ウェルベック(ちくま学芸文庫)
・「菜食主義者」ハン・ガン(クオン)
・「冬の夜、ひとりの旅人が」イタロ・カルヴィーノ(ちくま学芸文庫)
・「マイケルK」J.M.クッツェー(岩波文庫)
・「わたしを離さないで」カズオ・イシグロ(ハヤカワepi文庫)
・「ホテル・ニューハンプシャー」ジョン・アーヴィング(新潮文庫)
・「2666」ロベルト・ボラーニョ(白水社)
・「昼の家、夜の家」オルガ・トカルチュク(白水社)
*二次大戦後なので、ドストエフスキー、ルイ=フェルディナン・セリーヌ、ジェームズ・ジョイス、ウィリアム・フォークナー、マルセル・プルースト、ジョン・スタインベック、アーネスト・ヘミングウェイなどなどは入れてません💦