GakuKobayashi

セデック・バレ 第一部 太陽旗のGakuKobayashiのレビュー・感想・評価

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小説家佐藤亜紀がこれまた小説家の山尾悠子の全集に寄せたエッセイで、彼の祖父からもらったお土産の話を書いていた。
佐藤亜紀に彼女の祖父は二つ同じだが作りに差はある土産物を見せ、どちらを選ぶか問いただした。一方はこの上なく精巧に作られ可愛げのない美品、もう一方はところごころに歪みやミスがありよく言えば味のある作品。彼女は後者を選んだ。理由はそれのほうが東南アジアのお土産っぽいから。そこで、彼女の祖父はそういった場所のお土産はいくら職人が手間ひまかけ精巧に作り上げても、後者のいかにも東南アジアのものというような稚拙なモノの方が売れ、職人はやる気をなくし、技術も低下していくと話したという。
彼女が言うように、この話はいかにも象徴的だ。
そして、このセデックバレ。
セデック族という民族と、近代化まっしぐらの日本の対決ということで、前者が稚拙、後者が精巧と受け取られがちだが、果たしてそうだろうか。
後者(日本)は前者(セデック族あるいは発展途上国とかそういったWordに置き換えてもいい)を稚拙と決めつけすぎではないだろうか。
この映画の最大の見せ場で、稚拙だと思われていたものが精巧に映るシークエンスはある意味で美しいといっていいだろう。
この映画もひとつ間違えたら稚拙になるところを緻密に作り上げ完成させた美品と言っていいのではないか。
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