「空腹も喉の渇きも忘れて、他人との格差にも負けず、ほんの少しの幸せを…」
想像よりゴリゴリの社会派。
嬉しいような切ないような、なんとも言えない気持ちになるラスト。その先にある未来に思いを馳せました。
朝早く登校し、宿題をすませるスタンリー。
顔にはいくつものアザ。
教科書のページは破られている。
子どもたちが待ちに待ったお弁当タイムも、スタンリーにはツライ時間。
水道水で空腹を紛らわす。
放課後、購買に列をなす子どもたち。
スタンリーはそれを横目にトボトボと歩く。
しかし、スタンリーにはイマジネーションと行動力がある。
おもしろいオブジェを作ったり、エッセイで先生を笑わすことだって出来る。周りの人を心配させないためのウソだってつく。
いつも明るく陽気なスタンリーはクラスの人気者だ。
そんなスタンリーを敵視するのは、ヴァルマー先生。
彼もスタンリーと同じようにお弁当を持ってきておらず、いつも周りに恵んでもらう。彼はスタンリーのクラスメイトの豪華なお弁当を狙っていた。だからお弁当を分けてもらえるスタンリーのことが羨ましくてたまらない。
「人の弁当を漁るな!弁当を持たない奴は学校に来る資格はない!」
ヴァルマー先生の背景は描かれていないけれど、たぶん彼も生きづらい境遇なんだと思う。それでアルコール依存やニコチン依存のように、食べ物依存になってしまったのかな。食べることへの欲求が抑えられないせいで、先生たちや生徒からも疎まれ、バカにされている。
わたしにはスタンリーよりもよっぽど、ヴァルマーさんの方が可哀想に思える。
毎朝祈っているマリア様に「見てください、僕のお弁当!」と4段重ねのお弁当箱を誇らしげに掲げるスタンリー。もう胸が熱くなりました。
スタンリーの生活。結局根本的には改善されなかった。けれど、スタンリーはこれからも好きなことを見つけながら、たくましく生きていく。