リッキー

スタンリーのお弁当箱のリッキーのレビュー・感想・評価

スタンリーのお弁当箱(2011年製作の映画)
4.4
983本目。190321
インドの貧窮と児童労働問題。

パッケージの写真で笑っている子供たちの姿を見て、お弁当にまつわる楽しい話なのかと勝手に想像していましたが、インドの深刻な社会問題を描いた作品でした。

主人公スタンリーは賢く、いつも笑いが絶えないクラスの人気者です。そんな彼は昼食の時間になるといつも教室を出ていってしまいます。心配する級友たちは、彼がお弁当を持参していないことに気づき、いっしょに食べようと誘ってくれます。

そんな仲間思いの優しい級友に囲まれながらの楽しい昼食の時間は、一人のアホ教師によって台無しにされます。その教師は子供たちのお弁当をつまみ食いすることを生きがいにしているため、自分の取り分を食べられたとスタンリーに激怒します。

この教師が子供たちのお弁当をつまみ食いするという設定は、フィクションとはいえ、私には考えもつきません。実際にインドではこんな人物が存在するのでしょうか。

本作品は冒頭シーンから、スタンリーが仏像の前でお祈りしていたり、朝早く学校に登校していたり、謎めいた描き方となっています。友だちや先生に平気で嘘をついたり、その場しのぎをしたりして、スタンリーはどんなキャラクターなのか見えてきません。
しかしラストまで鑑賞するとすべての謎が解け、スタンリーにとっての学校、友達、お弁当の持つ意味が理解できます。
これらのエピソードはとても切なくて誰もが涙してしまうのではないでしょうか。

最後のシーンで、ある人物からお弁当を作ってもらって嬉しそうに登校するスタンリーの姿に私は安堵しましたが、同時にこの国の深刻な社会問題について考えさせられました。この終わり方では、スタンリーを取り巻く問題の根本的な解決にはなっていないからです。

インドでは国民の格差が広がり、現在でも大勢の子どもたちの貧窮と児童労働が深刻な問題となっています。製作者の社会を皮肉った描き方が秀逸でした。

一日も早く、スタンリーのような少年が一人でもいなくなることを心から切に願います。
リッキー

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