とみやま

恋する宇宙のとみやまのネタバレレビュー・内容・結末

恋する宇宙(2009年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

自分の中では傑作系映画を久々に観た気がする。

重い荷物を女性が持っていても、気が利かないし、手伝わない。顔にすぐ出てしまう。言葉に出してしまう。冗談を真に受けてしまう。が、ベスが好きになることで、自分の至らないと言われるであろうところを見つめられるようになる、というのが良い。

失楽園で、アダムは一人だったけれど、イヴが生まれることによって、他人と付き合う必要性が生まれる。つまり、恋してしまったベスと向き合うために、自分自身をどうにかしようとする。

いや、たしかに、ビミョーなところはある。アスペルガーについての説明をする台詞は悪どいなあとも感じるし、中盤はアスペルガー症候群である設定が薄れていて、恋愛映画が大切な部分を覆い隠していたりもする。

でも、なんというか、観ていて、アダムと向き合いたい、って思ってしまったんだよなあ。そう思わせてしまっただけで、この映画は良い作品だと思う。他人と向き合うのは、物語だからできる特権だな。

その、「向き合う」という点では、レストランでベスなりにアダムに向き合おうとするところとか、公園とかでアダムなりに感情を伝えようとするところが良かった。
何よりラスト。結局、別れてしまうというのが良かった。「(500)日のサマー」でもそうだったんだけど、別れてから分かることってあるよね。ってこと。
あの時ベスが一緒に来てくれなかったのは、やっぱり、「私にとってあなたは最適ではなかった」ってことだと思う。いくらアスペルガーで寄り添いたくても、恋人として寄り添いたくても、アダムには満たせなかった。そして、いくらベスがアダムに向き合うといっても、自分の人生がある。そこは譲れなかった。逆を言えば、アダムにとっても、ベスは最適ではなかったんだ。「体の一部」としか表現できなかったのはそこ。不安をかき消してくれる灯りでしかなかったんだ。だから、結局、別れてしまった。でも一人でも行けた。そうさせてくれたのはベスだし、成長するきっかけを作ったのはベスだよね。そして、その恋愛譚によって、自分のどうにもならなかったところを良くすることができたんだよ!
とみやま

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