このレビューはネタバレを含みます
生きることの儚さ、虚しさがじわりじわりと伝わってくる。トイレ清掃員の主人公なのが重要なのかもしれない。平山さんが見ている世界は、もっと残酷なのでは？とか、理想化されてはいないか？など思わないこともないけれど、ルーティーンのような整然とした生活を情緒豊かに送る。淡々としているのにすごい面白い。夢のシーンも、モノクロというよりも影絵のようなユニークさがよかった。
姪っ子が家出して平山家に逃げてきたあたりで、あっ、と思った。姪っ子の母、つまり平山さんの妹さんが発する「本当にトイレ掃除やってんの？」と、その目。「おじさんとは住む世界が違うって言ってた」などの台詞。いままで物語らなかったけど、やっぱりそうだよな、という残酷さが妙に見える。だからといって絶望するわけでもないのが、この作品の良いところ。
河辺の薄暗い高架下での、三浦友和さんとのシーンも素敵。役所さんの素晴らしさは言わずもがなで（ほとんど台詞がなく、無声映画のようだった）、この2人が影踏みをするところが非常に良かった。
