市子のとみやまのネタバレレビュー・内容・結末

こういった映画を観ていると、世の中には見えないことになっている存在がどれだけいるんだと思えてくる。社会の歪みによって、文字通り存在しないことになっている人がいて、その歪みと惨劇を分かりやすい勧善懲悪や説教にせずに、サスペンス・ミステリーの枠組みに組み込んでいくのが良かった。
それにしても、離婚後の女性の300日ルールで発生する子供の戸籍問題は、不勉強ながらこの映画を通して初めて知った。というか、その実例を聞けば「そりゃそうなるだろ！！」としか思えず、なぜ今も…と思えてならない。が、それを維持しなければならないと言っている人がいる、両論併記で済ませてはならない社会の歪み。
市子の輪郭が見えてきたあたりから、考えうる限りの地獄（でも現実の延長線上におそらく存在する地獄）をまざまざと見せられた気分。途中のある展開で、市子が笑いながら絶望するところとか、もう。
一番観ていて辛かったのは、北くんが出てくるところ。冴えない若い男性像として非常に絶妙なところを突いてくる。市子の抱える問題を共有し「お前を救えるのは俺だけなんだ」と迫るシーンは、もうどうすればいいのか…。市子の気持ちを推し量りきれない凄まじい場面。杉咲さんと森永さんがあまりにも上手すぎて、本当に嫌で凄かった。

とにもかくにも、市子を演じている杉咲花さんは凄かった。若葉竜也さんや渡辺大知さんなど、周りの役者陣も非常に素晴らしいんだけど、ちょっとこれは、という驚く演技。