漱石枕流

武士の献立の漱石枕流のレビュー・感想・評価

武士の献立(2013年製作の映画)
3.6
10数年前。東京を旅行したとき、駅で警察官に呼び止められた。リュックを持っている男性限定で職務質問しているというのだ。刃物を持っていないかと尋ねられたので、スイスのアーミーナイフを持っていると申告したら、署に任意同行するように言われた。

なんでも刃渡り6センチ以上の刃物を持ち歩くのは軽犯罪法違反になるというのだ。「ひとを傷つけるために持ち歩いているのではない」と言うと「あなたにその意図がなくても、うっかりこれを落として拾ったひとが傷つけたら大変なことになる」というのだ。

私にはピンとこない話だった。毎日、料理をしている今の私にとって刃物とは野菜や肉、魚を切るものなのだ。刃物を見てすぐに犯罪に結びつけるのは、職業柄仕方ないのかもしれないが、すこし不愉快な気持ちになった。

そんな考え方の人間なので、包丁侍が恥ずかしいだなんて馬鹿げていると思った。武道を嗜むことが悪いとは思わないが、ひとを切るより、料理が仕事という方がよっぽどいいと思う。

タイトルからして時代劇版『美味しんぼ』みたいなものを期待したのだが、意外にも政変が絡む重い話だった。私自身は日本史にうとい人間なのでそこはあまり興味が引かれなかったが、ドラマとしてはいいと思う。

今より女性の身分がずっと低かった時代に、あえてヒロインを活躍させる方法として、この展開を選んだのは(おそらく史実にはないことだろうが)よかったと思う。上戸彩の演技も好印象だった。

ひとつ難を言えば、料理があまり美味しそうに見えないことだった。おそらく資料を参考にしてなるべく忠実に再現した結果かもしれないが、ここは映画であることを優先させて欲しかったと思う。

[オリジナル音声+日本語字幕]2023/04/12 WATCHA
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