みほみほ

真木栗ノ穴のみほみほのレビュー・感想・評価

真木栗ノ穴(2007年製作の映画)
4.0
こ、れ、は、面白い。生臭く高品質。
欲求を掻き立てられ、観る人の心を作品の中に引きずりこむ魔力がある。

主人公 真木栗勉の人間性は、真理をついてくる小難しい男であり、言ってる事は正しいが神経質。だが不思議と惹かれてしまう謎の魅力と想像力を持っている。じわじわと追い詰められていく過程が自然で、呆気にとられてしまう。

現実と空想の見境がつかなくなった時、頭の中で整理して また見返すと 解釈が深くなっていくのが堪らなく面白い。ホラーという認識で観ていたが、ホラー要素を感じないまま 面白さで忘れていたのだが… 80分以降から空気が一変する。

まんまと飲み込まれて騙されたが、ミステリーに近いのではないか。あっという間にその世界に吸い込まれていった。

とある作家の男。
部屋に開いた一つの穴。次の連載の目処もなく、生活に困っていた男の元に、ひょんな事から得意としない官能小説の仕事の依頼が入る。突如として現れた淡い夢のような女と、様々な人との出会い、そして穴から見える 本来見える筈のない隣人の姿。

依頼を受けた官能小説が軌道に乗ってゆく。…そこから 全てが始まるのだが、なんせ発想が面白過ぎる。 覗き穴と官能、本来なら当人同士しか分からない情事、閉鎖的な生活の中に なにかを見い出す真木栗と、慈愛に満ちた女の出現。恋なのか欲望なのか…

一緒に小説に入っていくかのような感覚と、作品の静けさが素晴らしい。キャストも飾らないし、世界観にマッチして相乗効果で余計に面白くなってる。キムラ緑子と西島秀俊のユニットバスでの混浴には 何かをくすぐられてしまった。

寂しい人の心に 取り入られたとでもいうのだろうか。。じわりじわりと吸い込まれて、気付けば現実が分からなくなる。情緒に溢れ人を惑わし、人間の心理をついてくるようなホラーもたまにはいい。ごく身近なようで遠い、そんな儚い世界に触れられた気がした。

久しぶりに いい映画観たなぁって思えて、質の良い邦画の空気感に触れる事ができた。

儚い幻だったのか… ただの空想なのか…
人の脳内を理解しようとしてもできないのと同じで、簡単に答えは出せない。冒頭と終盤の定食屋さんに注意してみると、理解が深まって 鳥肌が立つ。

『真木栗ノ穴』
タイトルだけ見ると 意味不明だけど、
凛とした 上質な作品でした。食わず嫌いしないで観てほしい一本。

今まで知らなかったのが恥ずかしい。
そして悔しい。心からおすすめです。
みほみほ

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