Ren

人魚伝説のRenのレビュー・感想・評価

人魚伝説(1984年製作の映画)
5.0
カルトここに極まれり。夫殺しの濡れ衣を着せられた海人さんが、村八分にされながら復讐の人魚と化す。私は大好き。

ホラーではないけど禍々しくて、純恋愛映画ではないけど妖艶。芸術的でファンシーと思わせるタイトルなのに蓋を開ければ湿度100%の邦画。脳がバグる。慣れてきた途端にハイパーバイオレンスで再び観客を置き去りにしていくのも堪らない。

水中のシーンはどこまでも青がはっとするほど美しく、しかし鮮血に染まるシーンはどこまでも生臭く。そして海にプールに大雨にとしつこいまでの水の描写。印象的なピアノの劇伴。世界観の構築に余念が無い。ちゃんと海人さんを題材に添えたことに意味を持たせる作りが素晴らしい。

復讐は救いをもたらすのか?なぜ悲劇が起きたのか、根本原因を探り続ける限り復讐は終わらないのだという虚しさにも似た感情を、映像と台詞で突き付ける。みぎわの振るう暴力が、中盤は闇雲かつ徹底したものだったのに、次第に闇雲かつ一撃で仕留める狂気を帯びていく。
もしこれが今リメイクされるなら、という超野暮な妄想をすると、主演は橋本愛がいいなとか思ったりした。

自分がR指定の映画を観るときに抱く、とにかく激しいものをよこせ!という正直な欲望を久しぶりにちゃんと思い出したような、そんな映画体験。もし自分がレンタルビデオ店で働いたら、復讐映画のコーナーを作った上でこの『人魚伝説』を、表紙を通路側へ向けて陳列したい。
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