広島カップ

刺青の広島カップのレビュー・感想・評価

刺青(1966年製作の映画)
3.7
若尾文子の背中がそれはそれは美しくて、そこに女郎蜘蛛の不気味な彫り物を入れられる様を具に描く。
若尾の背中の動きに合わせて本当に生きているかのように蜘蛛が動くというのが本作の画的な最大の見せ場。
次々と男達を食い物にしていくヒロインですが元来が我儘な金持ちの家の娘(若尾)でそこの手代(長谷川明男)と駆け落ちをし、背中に刺青を入れられ芸者宿に売り飛ばされるというヒロインに対する同情も加減はそこそこの物語。元々その素地があった女が人生を変えて行ったという話でその決定打になったのが背中の刺青。

若尾は勿論本作の堂々たる主役なのですが影の主役と言ってもいいのが山本学演じる彫り師。
ある日彼の目の前を裸足で歩く若尾の足部の美しい肌を見た途端に「お前に彫ってみたくなった」という掘り師のシーンがとても良い。
彼は全霊を傾けて蜘蛛を彫り上げる。
しかしその出来栄え故に若尾のその後がずっと気になり付け回す。自分の作品のその後を気にしている彼はアーチストといってもいいかも知れません。
彫り物そのものが命を持ちその人の人生を変えて行くことを知っているという特異な職業の男を好演です。
養命酒のCMで私が知っていた山本とは180°印象が違って驚きました。
ラストは人の人生を操っていた主役は実は彼なのではなかったのか?と思わせるもので作品に深みを感じました。
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