アタフ

リアル 完全なる首長竜の日のアタフのレビュー・感想・評価

3.5
黒沢清映画をもっと知りたい。

黒沢清の映画は大好きなんですけど、まだ未見のものもあるため、この外出自粛という事態を機に出来るだけコンプリートしようと思い立ち、『リアル 完全なる首長竜の日』を鑑賞。

相も変わらず黒沢清の映画は癖が強い。佐藤健と綾瀬はるかが出ているからという軽い気持ちで見に行くと痛い目に合うこと間違いなし。

今作は、人の意識化に"センシング"という技術を使って入り込む、『インセプション』や『ザ・セル』といった作品と同様の潜在意識潜入映画です。
この手の映画のキモって、潜在意識内の混沌とした様子をどれだけ魅力的に描けるかというところだと思うんですね。『インセプション』だったら、街がグニャーって折れ曲がるシーンとか、『ザ・セル』の異様な世界感とか、とても魅力的で印象に残っています。

そういった点では、この手の映像は黒沢清の得意とするところでしょう。綾瀬はるかの潜在意識の不気味さは秀逸で、水のたまった部屋や表情のない人間(この映画の言葉で言うとフィロソフィカルゾンビ)などの不気味さはホラー好きとしてはたまらない。ただ、松重豊のフィロソフィカルゾンビは笑うなというのが無理なレベルで変である。正直爆笑した。

黒沢清映画は『CURE』や『回路』のように明確なホラー映画でなくとも、所々どう見てもホラーにしか見えないシーンが散見されるのも特徴ですね。『トウキョウソナタ』や『カリスマ』などでも、意図してなのかは分からないが、ものすごくゾッとするシーンがある。そういった点が黒沢清映画の魅力の一つだと思います。

ただ、一般的に分かりやすいストーリーではなく、細かな辻褄や明確な説明などは期待しないほうがいいです。なんでこうなるのか?とかこれはいったいどういう意味だ?とか気にし始めたらキリがありません。他の黒沢映画にも言えることですが、全くと言っていいほど"分かりやすい"映画ではないんですよね。だから、見る人によっては酷い映画に見えることもあるかと。

個人的にも、終盤の展開の理屈とか納得しずらいとこもありますし、雑な部分があるのも確か。中谷美紀演じる女医の存在感がとても謎。なんか安いトレンディドラマから出てきた感じで、ちょっと浮いていた気がする。

また、唐突な首長竜のCGにもビックリさせられる。まさか黒沢清映画でこんなモンスター映画みたいのシーンが見られるとは。だが、意外にもCGの質は悪くなかった。

といった感じで、変な映画であることは間違いなく、一般的に好かれる作品ではないですかね。
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