円柱野郎

ウォッチメンの円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

ウォッチメン(2009年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

「300」のザック・シュナイダーの作品だけあって、その映像に対するこだわりは素晴らしい。
まさに原作をそのまま実写化したと言わんばかりの雰囲気は、彼らのリスペクト精神がひしひしと感じられて気持ちいいね。
また原作に対してだけでなく、「地獄の黙示録」や「博士の異常な愛情」という映画に向いている所もニヤリとするw

ストーリーは原作がヒューゴー賞の受賞作と言うだけあって、かなり見応えのある深いモノだった。
表面的なヒーロー映画ではなく、架空の世界での「核戦争一歩手前の冷戦構造」という歴史を描くことで、人間・国家の愚かしさ、正義の概念から平和の概念まで問うて来るというのには参った。
アメリカをカリカチュアしたと思われるキャラクター“コメディアン”。
神の視点では、もはや人間など関心の対象でもなくなってしまう“Dr.マンハッタン”。
犠牲によって作られる平和でもそれが正義と信じる“オジマンディアス”。
このあたりの比喩的な存在が良い。
ダークヒーローではあったが“正義”であることにこだわり続けた“ロールシャッハ”の最期が哀しい。
“ナイトオウル”と“シルク・スペクター”は“希望”の表現型だろうけども、作品全体としてみれば人間に対しての絶望が通奏低音の様に流れている気がする。
そこがこの作品の見応えでもあり、重く感じてしまうところでもあるかな。

2008年の「ダークナイト」がヒーロー映画の皮を被った犯罪映画なら、「ウォッチメン」はヒーロー映画の皮を被った見事なSF映画だった。それにしても世界観が深い。
深すぎて、何も知らずに見てしまうとついてくるだけでやっとの映画だろうね。
そういう意味では観る人を選ぶ作品だとは思う。
円柱野郎

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