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ゼロ・グラビティのkaneのレビュー・感想・評価

ゼロ・グラビティ(2013年製作の映画)
3.0
宇宙はロマンの象徴で描かれることが多いが、この作品は恐怖の象徴として描かれている。
前者は未知のものに対する好奇心なので共感しやすいが、後者は想像の域を出ない心当たりのない感覚なため、共有しづらいが本作は観客を十分に騙せるほどの映像表現によって成功させている。
中盤までは、これ以上無いぐらいに孤立無援な恐怖を感じていたのだが、ストーリーがワンパターンで、同じような展開が何度も繰り返されるため、興醒めして現実に引き戻されてしまった。状況説明も主人公の独り言に頼り切っていて面白みがない。中国の衛星内で漂う卓球ラケットに失笑。

申し訳程度の人間ドラマにもうんざりする。あれならまだない方が良かった。
ラストシーンも安直すぎる。自分の足で歩むことの大切さを伝えているはわかるがが、直接的すぎて芸がない。それにその主題だと、宇宙ではなくてただ無重力の状況を準備すれば良くなってしまう。その考えが、ラストの無重力な水中から這い出てくるシーンに見て取れる。あのドラマが成立するには、主人公にとって宇宙が現実から逃避できるような安全地帯である必要があると思うのだが、作中では真逆に描かれているので矛盾しているようにも感じる。

とは言え、映画館で観るならば、そういった点を加味しても映像的な説得力は持っているので、機会がある人には強く勧めたい。
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