kane

ライフ・イズ・ビューティフルのkaneのレビュー・感想・評価

3.6
見始めてすぐに、あぁ、こいつのこと好きになれない、と確信した。
冒頭から自分勝手なグイドにイライラ。彼の勝手な行動によって不幸に見舞われた人も少なくないはずなのだが、全くそのことには触れずになかったことにされている。何か理由があっての行動というわけでもなく、ただの自分本位な行動で、周りからしたら迷惑行為でしかない。そんな彼に惹かれる奥さんにもイライラ。愛があれば迷惑をかけてもいいなんて納得もできず、この映画が描こうとしている大きなテーマと混じり合わない気がする。

そんな態度だから、どうせここからはお涙頂戴的な展開が用意されているのだろうと身構えていたのだけれど、最後の最後までユーモアを徹底しており、良い意味で期待を裏切られた。全く悲壮感がなく、あくまでコメディで押し切っている。残酷なシーンもワンシーンのみで、描き方も秀逸。それまでの楽観的な展開に引き立てられ、あまりにもあっけなく見える。

ユーモラスで説教臭くない落とし所というだけで満足ではあるが、タイトルもフィクションだからこそ成立するものであり、実際にあった出来事にこの題名をつけるのは賛同しかねるのと、都合が良すぎる点も多々ありやはり童話の域を出ないとも思ってしまう。随所に欺瞞を感じるものの、それでもあんなに嫌悪していたはずのグイドの最期には刺さるものがあった。
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