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ショーシャンクの空にのkaneのネタバレレビュー・内容・結末

ショーシャンクの空に(1994年製作の映画)
2.9

このレビューはネタバレを含みます

アンディが自由を勝ち取り、新たな人生を歩み始める姿に感動を覚えないことはないのだけれど、それ以上に、自由に絶望させられてしまうレッドが生きることを選び取ったという行為に好感が持てる。

希望に満ち溢れた結末で後味もいいのだが、物語が収束し始めるまでの約2時間が退屈で仕方ない。退屈と言うよりも、暇と言った方が適当だろうか。冗長も冗長で、省略できる、省略すべきシーンは多くあったように思う。わざわざ能動的に登場人物の心情を慮る必要もないほど親切で、その分、手持ち無沙汰で暇になってしまう。
加えて、善人と悪人を安易に描き分けてしまっている点も、そのように感じた理由の一つだろう。どの人物も単純化されすぎていて人間味を感じられない。

本作品の主人公は、展開的にも、意志が固定されてしまっているためにもアンディは難しく、内面的な葛藤を抱えるレッドこそが主人公たるべき人物だと思うが、単なる語り部にしかなっておらず、心情描写も粗雑で、もったいない気がしてしまう。

また、事件の発端とその後の核になるテーマに齟齬が見られる。事件についてのあれこれは、作中では特にあれこれ語られず、脱獄決行前に、アンディがレッドに「自分が殺したのも同然かもしれないが19年間でそれに値する償いはしたと思っている」と告げるワンシーンで強引に解決している。このセリフには、本当に腹が立ってしまう。冤罪だとしても、罪の意識を感じていたのならば、許されたなんてわざわざ自分で言うことではない。第一、投獄されてすぐに彼は穴を掘り始めているわけで、先の発言は自己欺瞞でしかない。
事件にまつわる愛情云々がアンディに冤罪を与えるという意味以上のものを持たず、逆に主題をぶれさせている。

感動的ではあるが、わかりやすすぎるがゆえに前のめりに見てしまうと、都合の良さに違和感を覚えてしまう、良くも悪くも名作である。
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