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ゼロ・グラビティの海のレビュー・感想・評価

ゼロ・グラビティ(2013年製作の映画)
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生まれるはずだった男の子の名前をそのまま付けられた女性が、無重力空間で胎児のように丸まるシーンを観た時、わたしはこの先何が起きてもこの映画を嫌いにはなれないだろうと思った。宇宙で聴く故郷の音楽、臍の緒のごとくたゆたう命綱、生と死が体のまわりでぐるぐると回り続ける。母と娘、生、死、幽霊、海潮、月齢、子守唄、色に音、匂いに感触、味、体温。完全ではないわたしたちに神さまは、手を掴むために目を、おもいだすために耳を、愛するためにくちびるを与えた、それにこたえるがごとく世界は完全に近く、全部がつながっている。地上があり宇宙があるのなら、生まれる前と死んだ後の魂もここにある、だからわたしはあなたを見守ろう、語りかけ、唄い、光を送り、愛そう。続けよう。宇宙飛行士は、無限の空間に放り出されたとき、与えられた五感を研ぎ澄ませて、青い球体を懐かしんだ。だからここに居るわたしは、水の中を泳ぎ、大地を掴みながら、宇宙で聴いた子守唄を、思い出し、愛おしむ。

やっぱり、ドゥニ・ヴィルヌーヴもそうだし、アルフォンソ・キュアロン監督の映画も、「女性と飛行物体」、このつながりを感じずにいられない。どんな意味を持ってそこにあるのだろう。これは考えたい。
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