あんがすざろっく

パトリオット・デイのあんがすざろっくのレビュー・感想・評価

パトリオット・デイ(2016年製作の映画)
4.5
実にヒリヒリする作品でした。
最近の実話の映画化は、周期が早いですね。何十年も前の事件ではなく、2013年に起きたボストンマラソンの爆破事件を描いてます。
だから、観客の記憶にも新しい。
ただ、詳細は知らなかったので、どんな人達が関わっていたのかは今作で初めて知りました。
冒頭の様々な家族の風景を描いていくシーンで、多分この人達が事件に巻き込まれてしまうんだな、こんな幸せな時間が奪われてしまうのかな、と、そこから不安が渦巻きます。
ボストンマラソン当日。とても歴史の古いマラソンということもあって、参加者も観客も多くの人で賑わいます。
そこに紛れ込む、大惨事を目論む兄弟。
もうこの辺りが、心臓バクバクです。
分かっていても、いつ爆発が起こるのかと、画面から目が離せなくなってしまう。
そして、映し出される爆発の瞬間。
現場は混乱を極めます。
警備にあたっていたマーク・ウォールバーグ扮する刑事トミーは、懸命に現場に指示を出します。救急車の要請、搬送道路の確保、マラソンの一旦中止。どこから手をつけていいか、分からなくなりそうですね。
爆発に巻き込まれた人達が、次々と病院に運び込まれます。その中で、子供や妻と離れ離れになってしまう人も。
現場にはFBIも到着、事件はテロの扱いになり、捜査の主導はFBIの手に移ります。

よく映画で描かれますが、警察とFBIの相性はよくなくて、いつも主導権争いしますよね。
実際を僕も見たことはないから分かりませんが、本作の地元警察とFBIの間には、あまり壁がなかったように見えます。お互いがすんなり協力体制を取ります。
まぁ映画とかの描かれ方が極端なんですかね。実際事件の流れはこんな進み方をしたんでしょう。
FBIにケヴィン・ベーコン、こういう役合いますね。
勿論主役は最近実話ものに欠かせないウォールバーグ。
どこにでもいそうな雰囲気だからなんですかね(笑)。
彼も現場の猛者が似合います、良い意味で。
その彼も悩みを抱えているんです。自分が電話をして呼んだばかりに、奥さんを現場に居合わせてしまったこと。許して欲しい、と奥さんの前で泣き崩れます。

現場の遺体を動かしてはいけないと、その場で何も手を出せずにただ見守りにだけ立つ警官の姿、あまりにもやるせないです。
それから、MITの警備員、言葉に出来ません。

少ない出番ながら、J.K.シモンズもいぶし銀の好演。
「セッション」のインパクトが強いだけに、意外です。

犯人を捉えようと、警察もFBIも一丸となって事件を追います。
やがて、ボストン市民も団結力を見せ始め、その姿は分かっていても感動的です。
ボストンの皆さんは地元愛がとても強いのだそうです。
今回の事件は、図らずもそのボストン市民の力を示す機会になったのでしょう。犯人達は、市民や警察の大きな怒りをかったのです。

爆破のシーンもそうですが、終盤の銃撃戦も、とんでもない迫力です。たった二人の若者を相手に、警察は総力をあげて挑みます。
それはそうです、警察官だって生身の人間、家族がいるのですから。犯人の素性も分からず、ましてや爆弾も持っているか分からない。

アクション映画とかで、一人とか二人相手に、馬鹿みたいに大勢で向かうことあるじゃないですか。
その方が主人公とか悪役の無敵ぶりが際立つ訳ですけど、本作を見て、いや、違うんだな、と思いました。
相手がどんな人間か分からないから、どんな武器や手段を使ってくるか分からないから、自分の身を守る為に、大勢で事にあたるんだな。それは相手が強いからじゃなくて、家族のことを考えたら、無茶なことは絶対に出来ないんですね。警察の皆さんも必死なんです。実話だから勿論その通りに描いたんだけど、その描写が凄く印象に残りました。

本作を見て、一度はボストンに行ってみたくなりました。
音楽も良かったんですが、トレント・レズナーが担当していたんですね。
最近はこの人も映画のサントラをよく手掛けるようになりましたね。

アンタッチャブルという映画で、ショーン・コネリーがケヴィン・コスナーに警官の心得を伝授します。

「職務を終えたら、生きて家に帰ること」

それを思い出しました。警察って、命の危険と隣り合わせの仕事ですもんね。
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