退廃美の濃縮還元、鏡の幽玄性と官能的な能動スローモーション(言いたいだけ)。明日あたり行こうと思ってるオッティンガー特集の予告編とかなり似通ってて驚く。スタッフロールのShinji Aoyamaが感動的。書かれた顔のドラマパートに引用

最高にロマンティックな晴海埠頭の夜景をバックに、水をちゃっぷんちゃっぷん官能的に揺らしながら踊る女装したジジイによって、いっさいの審美性を超越した地平へと運ばれていく。グロいのかエモいのかよくわからなくなってアガった。未使用フィルムも併映されたが、大野一雄をフォローするのに飽きる（場がもたなくなる？）と、壁のラ・アルヘンティーナの写真までパンするレナート・ベルタはけっこうワンパターンというかやる気ないのでは？

濱口竜介監督著作『他なる映画と』刊行記念上映&トークショー「他なる映画とからだたち」にて。

フィルムにて上映。前付けでユーロスペースのアートドキュメンタリー作品だと知る。

大野一雄がかっこ良すぎる…。

晴海埠頭で踊るシーンでは、水のあるビルの屋上？から奥のお台場の海がつながって見え、遠くのアクアラインの車の灯りが定期的に光り、円運動を見せている。これほど幻想的な東京の夜（夜明け）があるだろうか。その中で、大野は、すべての動きと融合するかのように、この空間=世界とともに舞う。電線に止まる鳥たちも完璧だし、まだ球体が完成していないフジテレビ社屋もノスタルジー。計り知れない芸術点。

カメラマンのレナード・ベルタが素晴らしすぎるのか。ダニエル・シュミットの演出もいいのか。カメラと呼応するように、ダンスパートナーと合わせるように、大野はダンスをする。（あまりダニエル・シュミットで惹かれた作品がないのだけど、見直そうかな）

もう一つ鏡のシーンも圧巻。鏡に映っているだけなのに、大野一雄は2人いるかのように見える…。なぜか動きが遅れて見える脅威。鏡の中の大野がお花を拾うけど、手前の実物の大野はトリミングによって遅れて拾う（あるいは拾ってない）ように見える。さらには鏡の中の大野は白塗りで、実物の大野は影で暗く別人（素顔の大野）のようにも見える。

自宅のシーンも好き。奥で奥様が何か料理をしている。そんな動きや音も、アンサンブルになっている。老いという概念がこの人にはないのか。あまりに優雅で憧れしかない。

※YouTubeでも見れるので、気になる方はご覧ください。もちろんフィルムのほうがいいけど。自分はDVDを買いました。