zhenli13

そして光ありきのzhenli13のレビュー・感想・評価

そして光ありき(1989年製作の映画)
4.2
圧倒された。セネガルの部族というモチーフをよくぞ思いついたというくらいイオセリアーニ寓話との親和性が高い。台詞に字幕が無くローマ数字付きの中間字幕が時々現れさながらサウンド版サイレント映画。多くの人が指摘するようにフラハティを思い出さずにはいられない。

生首を縫い合わせて蘇生させたり、ふーっと息を吹くと旋風が起きて皆吹っ飛ぶとか、イオセリアーニの飄然として過激な寓話がここでも見られつつ、伐採される巨木や集落を横切るトラックなどの存在は暗い影を落とし、集落の人々のようすをただ物珍しく面白可笑しいものとしてみることはできない。
そういったポストコロニアル的態度も一笑に付すかのよう。妻を探すために集落を旅立った男は、イスラム教徒、キリスト教徒に出会い、「文明」に出会い、行く先々で着衣が増えていく。集落を追われた人々は「文明」のもたらした生活、資本主義消費生活に適応し、祈りの対象であった人形を並べて商売する。一方で集落から逃げた女性は見限った夫と共に再び集落へ戻るものの、そこは呪われた土地として全部焼かれてしまっている(ここでこの集落は本物ではなく撮影用のセットであったことに気づく)。集落を焼き尽くす炎を双眼鏡で眺めるのはキャンプのテントを張る白人家族。そういったものがすべて並列で描かれている。
部族の人々はとてもスラっとしていて、とくに若い女性の真っ直ぐのびる手足の長さが尋常でなく美しかった。

イオセリアーニ追悼。Box買ったので未見作品観ていく。
zhenli13

zhenli13