茶一郎

サイド・エフェクトの茶一郎のレビュー・感想・評価

サイド・エフェクト(2013年製作の映画)
4.0
【短】抗うつ薬の副作用(サイド・エフェクト)として夢遊病を患ってしまった女性。彼女が夢遊病下、無意識に引き起こしてしまった夫殺し、その一つ目の殺人から段々と新たな恐怖が生まれ……
 今作『サイド・エフェクト』は薬の副作用から生まれてしまった殺人事件が、さらに生み出した「サイド・エフェクト」である恐怖と不安が、人と人とを超え波及していく様をサスペンスフルに描いた作品になります。

 『コンテイジョン』ぶりに、脚本家スコット・Z・バーンズ氏とスティーブン・ソダーバーグ監督とがタッグを再び組んだ作品。やはり『コンテイジョン』と同様に今作『サイド・エフェクト』も寒々しい日常の恐怖、世界の不均衡がかすかに画面から伝わる黄色がかった冷たい画作りが素晴らしい一本でした。
 まるで主演の一人、精神科医バンクスを演じたジュード・ロウが、ヒッチコック作品常連のジェームズ・スチュワートに見えてくるようなヒッチコック十八番の「巻き込まれスリラー」から始まり、段々と裏切り・裏切られの医療サスペンスに変容していきます。

 ここまでに世界を冷たく切り取り、日常における人間関係の不安を浮き彫りにする硬派な作品をソダーバーグ監督が作り上げたということには驚きですが、逆に小賢しい実験的な編集・撮影無しの今作は、ソダーバーグ監督でなくとも演出力がある監督なら撮れてしまうような「フツーに面白い作品」になってしまっているとも思い、少し物足りなさを感じました。
茶一郎

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