あなぐらむ

黒薔薇昇天のあなぐらむのレビュー・感想・評価

黒薔薇昇天(1975年製作の映画)
4.3
岸田森が十八番のびっこキャラでしゃべくりまくりの「自称芸術家」ブルーフィルム作家を演じる、神代監督による重喜劇。
そこには裸映画を撮る自身と、大島渚ら「向こう側(一般映画作家)」との自嘲と矜持の両面が見える。性と愛の幕間を撮り続ける中年男の哀愁が沁み入る。
どこまでも長回しにこだわる姫田真佐久カメラに鈴木暁の編集も負けじと抗い、絶妙な緩急を作り出す。

鴨井大介並にしゃべくる岸田の芝居に引き摺られて芹明香もいつになく輝き、谷ナオミの造形もたまらなく面白い。海から全裸で上がってくる様は比丘尼のそれ。

「映画を作る映画」もまた、ハズレが無い。あの一連の流れるような芝居がアフレコだというのは、劇中でやってみせている訳だけどそれでも信じがたい所がある。「そうなんですかァ」だけを何度も言って全部色が違ってる谷ナオミさんの芝居、堂に行った関西弁は、ロマンポルノの京マチさんと言ってもいい気がしてくる。

映画学生だったので、もうそこが楽しい映画でもある。16ミリを回した事もあるから、冒頭からの円環構造である海からパンするNGなんてのはカメラやった事ある人は全員頷くと思う。
ストリップ小屋のライブ性から「映画」へと。クマさんの変遷が見られる。