ベルサイユ製麺

ANON アノンのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

ANON アノン(2018年製作の映画)
3.2
世の殆どの女性が実は知らない、男子の秘密をドキドキしながらコッソリ書きますよー!

…男子は…全員…『ガタカ』が好き!

…あー、書いちゃった。驚きましたよね?なんせ全員ですからね。自分でも書いててビックリですよ!
よく“男はみんなダークナイトが好き”とか言いますが、そいつは全然分かってない。ダークナイトが好きなフリして中二っぽさを装いながら、実はもうちょっとだけロマンチックな『ガタカ』の事を心から愛しているのです。男の心の中にはみんな焼却炉が有って、その中で自分が体育座りして空を見上げているのですよ!!!
…という事で、『ガタカ』の監督アンドリュー・ニコルの作品です。実はガタカ以降の作品、全て微妙な評判だったのでずっとスッ飛ばしてきてたのですが、ちょうどクライヴ・オーウェンの顔がボンヤリとしか思い出せなくなってるなぁと思ってたところだったので借りてみました。

近未来、或いはパラレルのお話。
主人公の刑事サルの視点。通りを行く人々の素性が全て文字情報で表示されている。この世界では、(理屈は説明されないが)リアルタイムで人物や商品の付加情報が視認できるだけで無く、見たもの全てが動画の形で記録されていて、他人がその記録にアクセスすることすら可能なのです。(全ての人が凡ゆる記録にアクセス出来るのでは無いと思う。お互いの了承がある場合を除けば、恐らく何かしら権限を持つものだけが他人の視認記録を開示出来るようです。)
サルは腕利きの刑事。ワイはサルや!…と言っても、全てが記憶される社会の犯罪捜査は、椅子に腰掛けひたすら他人の視覚動画を見て回るだけ。これは結構アイロニカル。サルの“腕利き”というのは、検索上手みたいなものかと。
んで、サルは奇妙な事件を担当することになります。ある殺人事件。検証したところ、被害者の視覚に犯人が写っていない、…というか被害者に見えていた映像は犯人が見ていた映像!…どうやら、この事件の犯人は、他人の視覚をハッキングして自由に編集する能力があるようなのだ。
この事件に直接関係あるかは分からないが、サルにはどうも気にかかる人物に心当たりがある。いつだったか、出勤時すれ違った女。彼女からは何の情報も感知出来なかった…。


プライバシーが完全消失した行き過ぎた監視社会のお話です。言わば、全人類が吉田豪化した世界!…そんなに悪くないんじゃ⁈
ディストピアものの基礎設定を突き詰めたような感じですね。しかし人々はその事を特段苦にしている様子は有りません。実際、今のSNSの環境が更に接続時間・密度・双方向性を拡大していけば自然とこうなるのかもしれませんな。
現実世界でも、携帯デバイスで撮影した画像・動画な最早全く信頼出来なくて、将来的に人間の認知とデバイスが完全シンクロするようになれば人間は今まさに見ているものすら信用出来なくなる…とか、なんかそんな事を言いたいのかな?《警鐘!》だな⁇ロボット社会めー!!
アノンはその女性の通り名で、アンノウンだかアノニマスの事なんでしょう。視覚をコントロール出来る存在が女性の姿をしているとして、その女性の存在は如何にしても確認しうるのか?他人の存在の実感を信用出来ないとして、自分が実存の肉体で在る証拠は?ふむふむ、考えさせられますなあ。ふむふーむ。ふむ…ふ…

💤

…で、あとはなんかハードボイルド設定のアドベンチャーゲームみたいな感じでしたなぁ。うん、凄くゲームっぽかったよ。
この映画、ルックが物凄くのっぺりした仕上がりに(恐らく意図的に)なっています。大きな見せ場などは無くて、リニアな感じで最後までスルーっと進みます。演技も小さめですし、劇伴があまりストーリーとリンクしないアンビエントみたいな鳴り方をしてて、…とてつもなく眠気を誘います。そう、凄く眠かった!テレンス・マリックに迫る勢い!それは言い過ぎ!!
あらすじの()で括った部分、ホントは劇中で細かく説明されてたのかもしれませんが、自分ずっと起きていたかちょっと自信無いです…。
恐らくこの単調さはある程度意図的になのだと思うのですが、上手く出来過ぎてしまったのではないでしょうか。ホントに眠かったの!すいません!
中盤以降何度も立ったり座ったりしながら眠さを紛らわしていたのだけどあんまり効かなくて、結局座ってひたすら集中しながら観てたのだけど…だんだんクライヴ・オーウェンの顔が夢に出てくる“This Man”の顔に見えてきて怖くて飛び起きた!(←寝てたな)
★仕事終わり映画鑑賞あるある→何回試しても寝落ちするゾーンがある。だいたい20分くらい経っている。

…結局何度も何度も巻き戻しを繰り返し、なんとかラストシーンにたどり着きました…。映画の感想というか、なんか達成感と開放感で胸いっぱいです!吾輩は高い確率でこの映画を全部観たのだ!
結果、印象に残ったのは…
⚫︎視覚に表示される情報のインターフェイスが凄くダサい!
⚫︎アノン役のアマンダ・セイフライトが超可愛い!アニメキャラみたい!
…の2点ですかね。あ、でもクライマックスのラストシュートの、初心者がFPSやってるみたいな素っ頓狂なルックは初めて見ました。一見の価値有りかも。

体調とかタイミングとかいろんな要素の兼ね合いで自分的にはそこまで響きませんでしたが、この雰囲気やメッセージにやられちゃう方もいらっしゃると思います。アンチクライマックス感は私も好きです!

フィルモグラフィ見ても、監督アンドリュー・ニコルんは基本設定を現実からちょっとだけいじった世界観の“すこし不思議”話が大好きなようですね。…となると、今後撮りそうな作品は…
⚫︎人と家畜の立場が逆転した世界
⚫︎性欲と食欲の観念が逆転した世界
⚫︎人口増加の対策として一定の年齢で食料の供給を打ち切られる世界
とか、あと
⚫︎リアルに描かれたその後のオバQの話
…とか撮ると良いと思います!あと『ガタカ2』!集団で偽る!!血が足らない!!!

では、おやすみなさい😴