Azuという名のブシェミ夫人

ブランカニエベスのAzuという名のブシェミ夫人のレビュー・感想・評価

ブランカニエベス(2013年製作の映画)
4.0
童話『白雪姫』をスペインの闘牛士やフラメンコに絡めてアレンジした異色のストーリー。
人気闘牛士アントニオ・ビヤルダは出産間近の愛妻の目の前で、大怪我を負う。
妻はそのショックもあり、娘を出産後亡くなってしまう。
自分の怪我と妻の死で自我を失ってしまったアントニオは、計算高く意地の悪い看護婦に操られるように再婚。
娘カルメンシータは、この継母にひどい目に遭わされながら成長していくのだが・・・。


観終わった途端に溜息が出た。
息を呑むような悲哀と美しさで溢れた作品。
全編がモノクロで描かれ、聞こえる音はBGMや部分的な効果音だけで、役者のセリフは時たま文字として映像間に映し出されるサイレント映画。
スペイン映画って赤を基調とした原色の鮮やかさで彩られている印象があるのだけれど、なぜかモノクロでもそれが十分に伝わってくるし、サイレントなのに彼らの言葉が聞こえてくるよう。
何より俳優陣の表情が豊かで素晴らしく、その情熱や愛や哀しみが画面いっぱいに表現されてる。
特に幼少時代のカルメンシータを演じたソフィア・オリアちゃんの眼の強さが印象的。
彼女が成長して大人に切り替わるシーンが物凄く美しくて素敵♡
祖母役アンヘラ・モリーナと父アントニオ役ダニエル・ヒメネス・カチョの愛に溢れた笑顔には心が温かくなる。
成長したカルメンシータを演じたマカレナ・ガルシアも凛々しくて素敵な女優さんで、まだ新人さんのようだけど注目したい!

大人へ贈る切ないお伽話。
観る映画ではなく、魅入る映画です。
ペドロ・アルモドバルやジャン=ピエール・ ジュネの作品が好きな方はこの映画も気に入られるのではないかと。
オススメです。