Azuという名のブシェミ夫人

オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴのAzuという名のブシェミ夫人のレビュー・感想・評価

4.0
ヴァンパイアのアダムとイヴは何世紀もの間愛し合ってきた。
正体を隠し、アンダーグラウンドでミュージシャンとして活躍するアダムは人間にウンザリしていて、最近ちょっと鬱気味。上手く時代に順応してきたイヴが精神的支えとなっている。
普段はアメリカとモロッコで離れて暮らす二人だが、久しぶりに二人で過ごすことに。
しかし、そこにイヴの妹エヴァがやって来たことで、二人の時間はかき乱される。

星空にJim Jarmuschの文字が浮かぶ。
そのまま星空はスピードを上げて回転してレコードに変わっていく。
そして更に回り続けると、次第にそれぞれの部屋で横たわるアダムとイヴに映像が移っていく。
グルグルグルグル回っているうちに、観ている私は見事にジム・ジャームッシュの世界に放りこまれる。
音楽も相まって、なんとも素敵なオープニング。

周りの人間が空っぽのバカばっかりでどうしようもないから、ゾンビって呼んでる。
優れた思想の持ち主を異端だとか言って排除しようとするんだ。
久しぶりに最愛の人が会いに来てくれたのに、奔放な妹まで来ちゃってイラつくんだよ。
ちなみに俺たちヴァンパイアなんだ、一応参考までに言うと。

・・・みたいな感じで、自分で題材に選んどいて【ヴァンパイア】という要素を雑に扱っちゃうジャームッシュ。
アナタのそういうとこが好きです。
途中でちょいちょい忘れそうになるもの設定を。
あっそうだヴァンパイアだったんだっけって。

作家クリストファー・マーロウ(真のシェイクスピア説のある人)が出てきたり、自分がモーツァルトに曲を提供したとか、使う偽名がフィボナッチ、カリガリだったりして、なかなかユーモラス。
病院の医師から血液を購入(まるで麻薬取引)する時に使う偽名がファウストっていうのも遊び心だね。ふふ。

終始美しいティルダ・スウィントンとトム・ヒドルストン。
彼らならヴァンパイアでも納得。
退屈でもいいの。