KENZO

青天の霹靂のKENZOのレビュー・感想・評価

青天の霹靂(2013年製作の映画)
3.2
売れないマジシャンが過去の浅草にタイムスリップして両親の真実を知る。
劇団ひとり初監督作品。

冒頭の惨めさの描写からタイトル画面までが秀逸。
オカマキャラでテレビに出る後輩マジシャンを鼻で笑っていたらバイト先に訪れたその後輩からタメ口を利かれ、
スーパーのおつとめ品のホットドッグをたまたま見つけた体でわざわざ言い訳しながら購入し、
住居が漏水で暮らせないため公園でそのホットドッグを食べようとしたら急に携帯が着信してソーセージを地面に落とし、
それでも汚れたソーセージを蛇口の水道で洗って口に入れようとする。
その後、父親が大事に持っていた若き日の父親と幼い自分が写った写真を見て、大泉洋が叫ぶ。
「何でこんなもん大事に持ってるんだよ。親父よお、生きるって難しいなあ…」

捨てきれないプライドの高さに不器用さも相まって描かれる悲惨さに胸を打たれる。
落雷からのタイトルロゴが辞書の説明文に変化するのも楽しい。

ストーリーはどこかで見たことあるようなオーソドックスなものだが、原作小説も監督自身の作品だからか、真摯かつ、大事に大事に作られている印象を受ける。
父親役も演じる劇団ひとりと主演の大泉洋の相性も良く、その後の『浅草キッド』へ繋がる形も理解できる。

クライマックスのマジックのシーンはややBGMが強めで泣かせにかかり過ぎてるきらいはあるが、スッと終わるエンドシーンは非常にスマートで好印象。
『陰日向に咲く』も本人が撮った方が良かったのかもしれない。
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