ミチ

いとしきエブリデイのミチのレビュー・感想・評価

いとしきエブリデイ(2012年製作の映画)
3.8
父親が刑務所に入り、仕事をかけ持ちしながら幼い4人の子どもを育てる母親。

家族の楽しみは、休日に電車に乗って父に会いに行くこと。そして、一日でも早く父が帰ってくること。
そんな家族の5年間を、5年かけて撮影したドキュメンタリーのような作品。


この作品のすべては子どもたちの成長が物語っている。

子役の4兄妹は本物の兄妹で、住んでいる家、通う学校も本物だそうだ。

そのリアルな空気感が、どんな演出やセリフよりもこの作品のテーマを物語っている。

だからこそ、それ以外に説明的な要素を一切入れず、ただただ子どもたちを丁寧に撮っているところに好感が持てた。

5年もあれば様々なことが起こる。大人だろうが子どもだろうが、どこにいようがその長さは変わらない。

しかし置かれている環境や、何をするかによって、短くなったり長くなったり、薄くなったり濃くなったりする。

だとしても。

私たちは生きている限り積み上げている。そして、その積み上げた上で生きているのだ。


ドキュメンタリーに近い空気ではあるが、美しい映像と美しい音楽がこの作品をエンターテインメントとして引き上げている。

特にラストシーンは芸術的で、音楽とともにとても印象に残った。


原題の「EVERY DAY」はこの作品を非常に的確に表していると思うが、邦題にはお決まりのごとく余計なものがくっついている。

いとしいかどうかは観る側が決めることだろうに。

そういうものを観客に委ねるタイプの作品だけに、原題そのままでいってほしかった。
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