2015年11月13日。衝撃的なニュースが世界を駆け巡った。
パリ市街を中心とした複数の場所で起きたテロリストによる攻撃は、130人の命を奪い、その何十倍、何百倍もの人々に大きな心の傷を残した。
本作はそんな不条理な事件によって最愛の妻を失ったジャーナリストのアントワーヌ・レリスが、幼い息子とともに生きた日々を綴ったベストセラー小説を映画化した作品だ。
印象的なタイトルは、主人公がFacebookに投稿したテロリストに宛てた手紙の内容からきている。
その手紙は3日間で20万以上も共有され、人々に衝撃と、勇気と、救いを与えた。
私はこのタイトルを見たとき、勝手に悲しみを乗り越えた先の言葉だと思っていた。
しかしそれは違った。
この手紙を書いたとき、彼自身も深い悲しみと、混乱と、抑えきれない怒りのなかに居たのだ。
悲しみのどん底にいる自分を、どうにか明日へ繋げるための言葉。
それが思いがけず大きな反響を呼ぶ。
憎くない訳がない。言葉が心を置いて行く。
それでも昨日は去って行き、明日はやって来る。
時に自分の言葉に押しつぶされそうになりながら、なんとか日々を繋いでいく主人公の姿がとてもリアルだった。
そんな彼自身の葛藤があるからこそ、この言葉は深い意味を持ち、多くの人々の心を揺さぶるのだろう。
いつどんな形で自分自身も悲しみや憎しみに引きずり込まれそうになるか分からない。
そんな時に思い出せるよう、お守りとしてこの言葉を持っておきたいと思った。