ミチ

熊は、いない/ノー・ベアーズのミチのレビュー・感想・評価

4.7
逮捕されても自由を奪われても映画という武器で戦い続けるジャファル・パナヒ監督の最新作。


国外逃亡しようとする男女のドキュメンタリードラマを撮るパナヒ監督が、リモートで指示を出すため滞在している国境付近の村で、ある男女をめぐるトラブルに巻き込まれてしまう。

そしてパナヒ監督を中心にして、この2組の男女が辿る運命を同時進行的に、時に交錯しながら描いて行く。


冒頭の演出からガッツリ心を掴まれ、パナヒ監督が描く現実と虚構の間をさまよい続けた107分間だった。

そしてラストカットからのエンドロールでどうにも出来ない怒りと涙が込み上げてきて、叫び出したい気持ちをどうにか抑えていた。


自由の無い世界から逃れようとする人たち。

しかしそれはあまりにもリスクが大きく、たとえ逃れられたとしても、その先に自由があるとは限らないし、たとえ自由があったとしても、根本的解決にはならない。

だからこそ自由の無い世界に留まり、ここで、この場所で、変えて行くのだ。

だから世界よ、見届けてくれ。

そんな強い決意を見せつけられた気がした。


熊はいるのか。いないのか。

熊はいるし、いないのだ。


観てよかった。

観ないで生きて行かなくてよかった。
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