ミチ

ヨーロッパ新世紀のミチのレビュー・感想・評価

ヨーロッパ新世紀(2022年製作の映画)
4.0
様々な言語が飛び交うトランシルヴァニア地方の小さな村。

鉱山が閉鎖され、多くの者が高い賃金を求めて出稼ぎに行く。

地元のパン工場は人手が不足し、外国人労働者を雇い入れる。

しかし、よそ者が入ってくることを良く思わない村人たちは、徐々に不満を募らせ、やがてそれは大きな渦となって行く。


「4か月、3週と2日」でパルムドールを受賞したクリスティアン・ムンジウ監督の長編6作目。

自身の母国を欧州の縮図として、その真の姿をじわじわとあぶり出していくような作品。

軸となる男マティアスは、大きくなっていく渦の中でなんの危機感もなくただ流され、やがて飲まれて行く。

それは観客としてスクリーンの前にいる私たちの分身のようで、大きな渦に飲まれたとき、自分に何ができるだろうと考えずにはいられない。


当事者たちと私たちとで温度差があるのは間違いないが、だからこそ私たちがいま観るべき作品であるとも言える。

17分間の長回しは圧巻。

ずっと死なない程度に首を絞められているようだった。
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