こたつむり

ロスト・ボディのこたつむりのレビュー・感想・評価

ロスト・ボディ(2012年製作の映画)
3.8
スペイン版土曜ワイド劇場「美人妻死体消失事件・愛憎の果てに辿り着いた惨劇!死体は夜な夜な歩き、罪深き男の背後から襲う…彼は果たして現世に留まることが出来るのか…!?」

“ミステリとオカルトはよく似合う”

最近の僕はこの原則を忘れていました。
論理的な決着に拘り、荒々しく猛る“恐怖の存在”から目を逸らしていました。やはり、小さな光である論理が活きるためには、“人知を超えた存在”で煽るべきなのですよね。そして、それは“整合性”という言葉から飛躍した場所にあるものなのです。

だから、本作を鑑賞して。
僕はミステリドラマの原点を思い出しました。
死体が消える…という目新しくないプロットの向こう側に見え隠れする“恐怖”。それが、「実は死んでいなかったのではないか」という推理と、「もしかしたら本当に生きる死体(リビング・デッド)となって甦ったのではないか」という想像が絡み合って、物語をグイグイと引っ張るのです。

確かに鑑賞し終えてから振り返れば。
いささか強引な展開ではあります。
でも、だからこそ、煌くのです。トキメクのです。それは、かつて怪人二十面相がポストに化けたように。“整合性”とか“必然性”などの呪縛に囚われて、何処かに置き忘れてしまった浪漫なのです。

まあ、そんなわけで。
深くまで考えずに雰囲気を楽しむ作品でした。
特に虚実どちらに転んでもおかしくないような演出は秀逸の極み。思わず吐き気がこみ上げてきそうな表現も含めて、なかなか盛り上げてくれます。また、登場人物たちも整理されているので物語に没入しやすいのも好印象。娯楽映画として最適でした。

ただ、あえて難を言えば。
お色気描写は足りないかもしれません。
僕としては、お色気は雑味に感じてしまうので(本当ですよ!)、無いほうが清々しいのですが、何故だか2時間ドラマには“付き物”なのですよね。

それと、出来る限り、事前情報は最小限で。
鑑賞後にウィキペディアを読みましたが、あらすじ…どころか、物語のすべてが書かれていますからね。何も知識を仕入れずに、そして頭を空っぽにして、スペイン産2時間ドラマをお楽しみください。
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