このレビューはネタバレを含みます
実話に基くヒューマンドラマの傑作。
フィロミナの物語は、一人でも多くの人に知って欲しいし語り継いでいきたい。
元政治顧問で現ジャーナリストのマーティンの協力の元始まったフィロミナの生き別れた息子探しの旅路。
マーティンとフィロミナには共通点があまりない。国、文化、階級、宗教観、職業等全てが違う。そんな二人だから会話は何だかぎこちない。旅を通して、フィロミナのチャーミングさと従順なカトリック精神にマーティンが吃驚しながらも受け入れていく過程に心温まります。
修道院の神父やシスター達が犯した罪を知れば知る程、遣り切れない悔しさを感じてしまいます。経営や体裁を守るために若い女性達の人生が壊されて、修復不可能になってしまった。その罪は、神への祈りにより償われて救われるのか。
観客の心情に寄り添っていると思ったのは、マーティンの詰問シーン。真実を知る権利をも奪い取られたのなら当然の反応だと思える。
フィロミナ自身の内なる葛藤の末に下した「赦す」という決断。目を背けてきた罪人には、「赦さない」という言葉よりも重く肩にのしかかるのではないだろうか。
運命に翻弄されながらも強く優しく生きて大きな愛で包み込むフィロミナ。彼女の人生がこの先ずっと幸せでありますように。恐らくマーティンもそれを願いながら原作を執筆したのではないだろうか。