シュンゴ

ノスタルジアのシュンゴのレビュー・感想・評価

ノスタルジア(1983年製作の映画)
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1+1=1 失われた合一を求めて

nostalghiaという言葉の語源に、ギリシャ語のnostos(帰還)とalgos(苦しみ)があります。
還りたい欲望が叶わぬ苦しみが、「郷愁」という感情を苦甘フレーバーに色づける。
そんでその苦しみの感情を、禁欲的かつ耽美な映像をもって霊的な領域への架け橋として変換する・・・というのがこの映画でタルコフスキーが為したこと なのかな

自転車漕ぎのおっさんの家の壁にデカデカと刻まれている1+1=1の数式と、「一滴に一滴を加えても一滴」
故国ロシアからの亡命を表明したタルコフスキーの望郷と人類の回帰願望が、フレームの内外に広がっていく霧の中で集合していく過程にて、映画を「鑑賞」する行為と、「合一」する現象の垣根が取り払われていく
なのでラストは毎度みてて一緒に具合悪くなる。

タルコフスキーの映画を見るのは一種の行に近い行為だと思うので、疲労感とリラクゼーションのあわさったよくわかんない感覚に襲われます。つかれる。


どの1秒で止めても完全な画をとらえているのがすさまじい
重厚なカメラワークが唯一微妙にテンポアップした、落ちていく羽を追うシーンが印象的。
統御できないものをとらえようとする感じがあってよかったです(犬はずっとおとなしかったのでコントロールできない感は少なかった)


因みにワンカットのパンで故郷の家族たちを映すシーン、カメラが役者を通り過ぎた瞬間に猛ダッシュで次の位置に移動して、追い付いたら何食わぬ顔で芝居を続けるというめちゃアナログな撮影方法らしい。
想像してみてたら笑ってしまった。