ぴよまろ

グランド・ブダペスト・ホテルのぴよまろのレビュー・感想・評価

3.9
架空の国ズブロスカ共和国にあるグランド・ブタペスト・ホテルの名コンシェルジュが、長年懇意にしていた資産家の老婆の死による遺産相続争いに巻き込まれ、大戦前夜の緊張感の中、ホテルコンシェルジュのネットワークを使って、謎を追う物語。

ストーリーは殺人事件の謎を追っていくミステリー的ではありますが、それよりも人形劇のような表現(登山列車やスキー&ソリのシーン)や、人物を画面の中心においたシンメトリーな画面構成、横移動の多いカメラワークなどによる、おとぎ話・紙芝居のような雰囲気が独特な映画でした。ある少女が読む本の作者が話を聞いた老人が若い頃に共に働いたコンシェルジュの物語、という4重の入れ子構造(といってもメインはコンシェルジュですが)なことも、寓話感に貢献していました。

適度な緊張感と笑いによる緩和が連続するので、情報量が多くてもテンポよく話が進み、目が離せないです。また、グスタフ・Hをはじめ登場人物たちが魅力的で、少ないシーン・少ないセリフで個性を出してくるので、その緩急が楽しいです。そして、ホテルコンシェルジュのネットワークを使うシーンがかなりワクワクさせてくれる見所。全体からすると短いシーンですが、コンシェルジュ同士の信頼感が伝わってきて、本作を象徴するものだと思います。

多くの著名な賞を受賞しているのも納得できる、楽しくてお洒落な作品でした。
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